2010年6月23日水曜日

次回ドミューン、7月6日(火曜)です!


6月は一回しかできなかったドミューン、次回は6日なので、いまからスケジュールに入れておいてください!



そして臨時ニュースですが、今週金曜(25日)は、なんとエルメート・パスコアールが特別出演するそう! ドミューンのマスター・オヴ・セレモニー宇川直宏くんによれば、

パスコアール今週金曜(緊急放送)の夜9じから12じですーーー!!!!!!
ぜったいみてくらさいーーー!演奏もしますよーー!!!!!!

とのこと、モニター前に正座して観たいものであります。ドミューン、ありがとう!

オレサマ商店建築:渋谷パブ・スコーネ

昼間もひどいけど、夜ともなればさらに騒々しい若者に占拠され、オトナにはなかなか近寄りがたい最近の渋谷界隈。駅から青山方向に宮益坂をあがったすぐ裏手に、古びたスナック・ビルが隠れていることを知るひとは少ない。そのビルの3階、正確に言えば3階と4階のあいだの踊り場に入口がある、まこと知る人ぞ知る存在の店、それが<パブ・スコーネ>である。


「SKÅNE」と書いて「スコーネ」と読ませるこの店は、スウェーデン直送のチーズをつまみに、スウェーデンを代表する蒸留酒であるアクアヴィットを飲む、スウェーデンのスコーネ地方そのままの店。しかも店内のインテリアは完璧に北欧デザイン。しかもお酒を注いだり、チーズを削ってくれるのは北欧美人。しかも営業スタイルはカラオケ・スナック! 渋谷でスウェーデンでカラオケで、というワケのわからないミックスが、異様に居心地いい隠れ名店だ。



「なんでもシンプルで合理的なのが好きなの」というママさんらしく、酒もつまみも基本的に1種類なので、「おつまみ持参歓迎」。そして会計は「席料3500円に、サービス料10%、いくらいても、飲んでもそれだけ」という超明朗会計。「だからお客さんに、自分で会計してくださいって頼んじゃうの」と笑う。

こんな素敵にオトナな店が、あんな街にあったんですねえ。

東京右半分:初音小路に吹き渡る風は、古き良き浅草の香りがする

いま再開発の波が押し寄せかけている浅草で、昔ながらの空気感をかろうじて保っている、たぶん唯一の場所。それが場外馬券場ウインズと花やしきに挟まれた一角にある『初音小路』である。


ゴールデンウィークごろには見事な花をつける藤棚が、十文字の通路にすっぽりかぶさる初音小路。たった数十メートルのブロックに、2階建ての飲食店が軒を連ねている。平日はひっそりと静まりかえる小路。週末は朝からどの店もシャッターを開け、外にテーブルとパイプ椅子を出して、馬券を買いに来る客にビールやホッピーや、おでんや焼き鳥を出す。慣れたお客さんたちは店頭に置かれたテレビの競馬中継を見ながら、グラスを傾けつつ競馬新聞をにらみ、ぐっと気合いをこめて立ち上がると、飲みかけのグラスを置いたまま馬券を買いにウインズに向かう。店のひともちゃんと心得ていて、お客さんが帰ってくるまでグラスも皿もそのままにしておいてあげる。そうして夕方まで盛り上がったあと、競馬客を当て込んだ店は早々に店じまい。そのあと長い夜は、開けるのにとてつもなく勇気が要りそうな、妖しげな気配を漂わせるスナックの時間だ……。




たぶん、今回初めて活字になる、初音小路の誕生秘話。浅草に興味のある方は、ぜひご一読を!

http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

アサヒカメラ今夜も来夢来人で:東京都国立市

東京屈指の学園都市、国立(くにたち)市。駅から歩いてすぐの<パブスナック来夢来人>のドアを開けてみると・・そこはスナックというよりアメリカのステーキハウスみたいな、広々と渋く落ちついた雰囲気。流れているBGMも80年代ソウル・ミュージック。ここ、ほんとにカラオケスナックですか?

開店したのが1985年というから、もうすぐ26周年。もともと現ママ・川村恭子さんのお母さんが始めた店を、化粧品会社の美容部員だったママが引き継ぎ、それからもう20年以上になる。


「もともとわたし、黒人になりたかったの!」というほど、高校生のころから筋金入りのソウル・ミュージック・ファンだった恭子ママ。若いころは新宿、赤坂、六本木と、ディスコのフロアからフロアへと華麗に舞っていたらしい。なので、集まってくるお客さんも自然と音楽ファン、それも洋楽好きが多いところが、ふつうのスナックとちょっとちがう。


しかもただ歌うだけじゃなくて、店に常備してあるエレキギターやエレキピアノまで弾きながらシャウトするお客さんもあり。しかもママを含め全員、激ウマ。日本人なのに・・。この店、なんなんですか?








神様対談:小林伸一郎さんと

『廃墟漂流』や『軍艦島』など、端正な廃墟写真で知られる小林伸一郎さん。奇しくも僕と同い年の1956年生まれ。その小林さんがこのほど、全国の「珍神様スポット」をめぐった写真集『神様 ー OH MY GOD!』を出版。僕とは大違いの(笑)、きっちり腰を据えた撮影スタイルが眩しいのですが、その小林さんと月刊日本カメラ誌上で出版記念対談してます。


同じ方向を向いてるもの同士(たぶん)ならではのお話がたくさん出てくるので、興味のある方はぜひご一読ください。



紀伊國屋書店scripta:展覧会としての本



今回の書評は、異例ではありますが広島市現代美術館で開催中の展覧会について書きました。なぜなら・・・

書評を書くべきこのページで、今回自分の展覧会のことを書かせてもらうのは、「一冊の本のように」展覧会を作ってみたかったからである。・・・つまり展示会場の、ひとつひとつの部屋を、一冊の本のひとつの章のように、そして部屋のひとつの壁を、1ページのように作ってみたのである。・・・観覧者は、だから部屋の壁を埋めつくす写真を見て、文章を読んで、あたかも本を読むように「壁を読む」ことになる。当然、ふつうの展覧会よりもずっと時間がかかるだろうから、どの部屋にもたっぷり椅子を用意して、疲れたら休めるように、また座りながら写真を見たり文章を読んでもらえるようにしてある。いわば「立体の本」を編集する感覚で、展覧会場を構成する作業は、なかなか楽しいものだった。

というわけで、展覧会場を丸ごと使った珍しい試み、ご一読いただけたらうれしいです。『scripta』は紀伊國屋書店出版部が季刊で発行する無料広報誌。お求めは紀伊国屋の各書店まで。

広島山口・HEAVENツアー報告

去る19,20日の週末、広島市現代美術館主催で、『広島山口・HEAVENツアー』という前代未聞の展覧会関連企画が敢行されました。

一泊二日で広島、山口周辺の珍スポットやアウトサイダー・アーティストを訪ね歩くというこの企画。抽選により当選された20数名と、僕を含む展覧会スタッフが観光バスに同乗して、なんというか、ゆる〜いマジカル・ミステリー・ツアーみたいな感じ? すばらしく楽しい二日間を過ごせました。

19日午前 東広島のゴシックホラー喫茶・伴天連

19日午後 山口市の史跡菜香亭にて、地元障害者施設の作家たちによるアウトサイダー・アート展示即売会『BESIDE』見学

19日夜 山口県湯田温泉の超絶パフォーマンス・女将劇場


19日深夜 湯田温泉のスナック来夢来人

20日朝 萩市在住のシュール作家・仲村寿幸さんのアトリエ夢境庵

20日昼 仲村氏おすすめ、萩市明神池にて
海水魚の群れとトンビ(!)にスリル満点のエサやり体験


20日午後 吉田松陰記念館にて、ロウ人形ジオラマ見学


さすがに電池切れの添乗員

20日夕刻 広島駅にて無事、解散

という、ものすごく濃いスケジュールでした。その全貌は、ツアー参加者のデザイナー・大岡さんがフリッカーにさっそくアップしてくれたので、ご覧ください!



そして湯田温泉が誇る歌姫・来夢来人の桂子ママの絶唱はこちらで!


展覧会で「作家ゆかりの地巡り」なんて企画はたまにありますが、こういうピンポイントのお楽しみを泊まりがけでやっちゃえたのも、勇気ある美術館スタッフのおかげ。そしてツアーに参加してくれたひとたちも、日常生活ではなかなか見つけることのできない(笑)、同好のお仲間をたくさん見つけられて、満足いただけたかと。こういう企画、いろんな美術館でやってほしいですよね!

2010年6月16日水曜日

本の雑誌:沢野ひとしさんの展覧会リポート

今月号の『本の雑誌』で、沢野ひとしさんが広島市現代美術館で開催中の展覧会『HEAVEN』をリポートしてくれています。それも4ページ! 沢野さんはこの記事のために、わざわざオープニングに広島まで足を運んでくれました。すごく個人的で、飲み屋で隣に座って聞いているような楽しいリポートなので、ぜひお読みください。

で、その記事の中で、僕が沢野さんと出会ったときのことが書かれてるんですが・・・

ある日、銀座の酒場でチラリとお見かけし、挨拶をした。驚愕したのはその格好だ。紺に白い線の入ったジャージのズボンにゴムゾウリ、中学生が着るようなヨレヨレの丸首トレーナー。しかも坊主頭で全体的に山下清を彷彿させる。私は見てはいけないものを見たようで、その場から隠れるように姿を消した。

いくらなんでもそんな・・・笑。おあとは、読んでのお楽しみに!

東京右半分:大衆ステーキの原点、ビリーザキッドで400グラム・ステーキに挑戦!


夜空に輝くテンガロンハットのカウボーイ。そして「大衆ステーキ」の力強い文字。むかしもいまも<ビリーザキッド>は、腹を減らした肉食愛好家たちのオアシスだ。


1977年に墨田区立花で創業。以来変わることのないメニュー。夕方6時から深夜3時までという営業時間。カントリー&ウェスタン風の内外装。もう33年間にわたって、ずっしり腹に溜まるステーキを、寸分変わらぬスタイルで我ら大衆に提供してきた。いまやビリーザキッドは全25店舗。亀有、錦糸町、駒込、新小岩、東陽町、大山、西葛西、日暮里と、そのほとんどが東京右半分に集中している。


右半分の胃袋を支えてきたビリーザキッドの創業者、幡野秀喜さんにお話をうかがうことができた。場所は思い出深い第1店の墨田本店。入ってくるなり、調理場に「おれにもビール持ってきて!」と声をかける姿は、とても今年67歳に見えない、エネルギーのかたまり。やっぱり、ステーキ食べてきたおかげなのでしょうか。



今週のマスト・バイ:『トラック野郎風雲録』

久しぶりに書いてみたくなった本が見つかりました。国書刊行会からこのあいだ発売された『トラック野郎風雲録』。初期のヤクザものから、『温泉みみず芸者』とか『女番長(スケバン)ブルース』とか『徳川セックス禁止令 色情大名』とか、1970年代初期、日本の映画産業が崩壊しはじめた時期に、末期的症状を迎えていた東映を舞台に、やけくそみたいなエログロ路線を突っ走った職人監督・鈴木則文さんの、77歳にしての初エッセイ集です!

書名のとおり、この分厚いハードカバー本は鈴木監督最大のヒット・シリーズでもある『トラック野郎』についての回顧談を中心に、みずからの映画世界から業界の裏話までを語り尽くしたもの。もともとは僕も愛読者であるデコトラ雑誌『カミオン』で、2003年から2010年までの長期にわたって連載されたエッセイを、一冊にまとめたものです。

ギンギラギンの11トン満艦飾トラックが日本列島を爆走する……。涙と笑い、義理と人情、下ネタとお色気が渾然一体となった昭和を代表する大ヒット娯楽映画シリーズ『トラック野郎』(菅原文太主演)の魅力を監督自ら綴る痛快回想録! (出版社サイトより)

国書刊行会は去年の『憂魂、高倉健』(横尾忠則著)といい、凝りまくった装丁の本を最近よく出してくれてますが、この本も図版はたっぷりだし、見返しは『トラック野郎』のポスターだしで、本好き、映画好きにはうれしい造り込みです。なお『トラック野郎』はすべてDVD化されているので、こちらも要チェック。本を読んだら、ぜったい全巻借りてきたくなります! いま見直してみると、あべ静江、由美かおる、夏目雅子に石川さゆりまで!、女優陣もすごく豪華だったんですねえ。

2010年6月9日水曜日

東京右半分:日暮里ダンス・ダンス・ダンス第3回


鶯谷から日暮里、西日暮里にかけての「東京ソシアルダンス・ゾーン」をめぐる旅の3回目。ダンスホールも、ドレスを買う場所もわかったところで、みっちりダンスを教えてくれるスクールを探してみよう。西日暮里駅から歩いて3、4分という好立地にある〈ダンシングプラザ・クロサワ〉にお邪魔してみた。金曜日の夜、最上級の「専科」クラスのレッスンが、これから始まるところだ。

黒澤瑞枝さんが、ご主人の光一先生と〈ダンシングプラザ・クロサワ〉を開いたのが16年前。一昨年に光一さんの突然の死という苦境を乗り越え、いまは瑞枝さんが中心になって教室を維持している。その瑞枝先生にお話をうかがった。


アサヒカメラ今夜も来夢来人で:岡山県備前市

焼き物の町、岡山県備前市香登・・・これを「かがと」って読めるひと、なかなかいないはず。香登のスナック来夢来人は山陽新幹線の高架下という、絶妙のロケーションに店を開いて、もう22年の老舗店だ。


「いまは町にスナック、ここ一軒だけ。むかしはもっとあったんですけど」と言うのは小山勝美ママ。香登から隣町の伊部(いんべ・・・これも難読地名)にかけて300もの窯元があるそうで、「人間国宝が4人も出たでしょ、ブームでみんな窯元になっちゃったから、いまは大変なの」。

観光名所・閑谷学校のそばに生まれ育ち、喫茶店を長く営んできた勝美ママ。「でも朝7時から夜8時まで店を開いてるのが辛くなって」、もともとは魚屋さんだったというこの場所に移ってスナック開業。いまは娘の美紀子さんと猫の”くーちゃん”と3にん(?)仲良くカウンターに立っている(くーちゃんはほとんどスツールで寝てますが)。



アートイット・ウェブ、新創刊と新連載

いつの間にか雑誌がなくなって、ウェブ版だけになっていたArtIt(アートイット)。このたび新たな月刊ウェブ・マガジンとして新創刊しました。

「日英バイリンガルの現代アート情報ポータルサイト」と銘打って、以前よりかなりブラッシュアップされたコンテンツ。執筆陣もハンス・ウルリッヒ・オブリストから椹木野依まで豪華ですが、その片隅で僕も連載やらせてもらってます。『ニッポン国デザイン村』と題して、安藤忠雄でもない、ワビサビでもない、真に現代的な日本のデザインを探るシリーズ(おおげさ)で、第1回目は「お水スーツ」について書いています。前に他誌で書いた部分もあるので、「もう読んじゃったよ」というかたもお出ででしょうが、日本的な「お水世界」が英訳されるとどういうことになるのか、そのへんも楽しんでいただけると幸いです!




LV式現代美術・その後

先週のブログで、神戸ファッション美術館に現代美術作家・岡本光博が出品した『バッタもん』が、ルイヴィトン・ジャパンの抗議によって展覧会から、会期中にもかかわらず撤収されてしまった事件について書きましたが(せっかく作ったカタログも販売中止になったそう・・)、読者の方から「こんなこともあった!」と報告メールをいただいたので、それもここでお知らせしておきましょう。

メールしてくれたのは宮城県仙台市を拠点に活動する現代美術作家・タノタイガさん。木彫をベースとする作品を制作しているタノタイガさんは、2005〜2006年にかけて『モノグラムラインシリーズ』と題した、一連の作品を制作しています。これはルイヴィトンのうちでも、もっとも知られている「LV]の文字を組み合わせたモノグラムの商品群を、そのままそっくり木彫で作ってしまおうというもの。なんだか須田悦弘の冗談&皮肉版みたいな感じですが、しかし細部へのコダワリは、写真で見るかぎりでもかなりのもの! 言われきゃぜったいわからない、言われたらぜったい吹き出す、楽しい労作でした。

2006年には木彫のLVバッグを肩から提げて、わざわざパリのヴィトンに行き、帰国。日本の税関を通り抜けられるかどうかに挑戦したプロジェクトも試みています。

また同年にはその作品をYahoo!オークションに出品、販売しようとしたところ、Yahoo!から強制削除されてしまったそう。

そして2007年、仙台市にある宮城県美術館でのグループ展『アートみやぎ2007』に、『モノグラムライン』は展示されることになりましたが・・・

会期直前になって、美術館側から作品のLVマークを隠すように指示がありました。なんと、美術館自らLVに「お伺い」を立てたというのです。
その結果、LV側から「訴えることになるかもしれない」との返事が来たことに配慮するというのです。
結果、僕の作品の意図を超え、LVマークに黒丸のシールを貼り、注釈を付けて2ヶ月間展示されました。
(タノタイガさんからのメールより)

この小さな事件は、当時ほとんどメディアで取り上げられることもなく、終わってしまったようです。先週の神戸ファッション美術館のケースは、ヴィトン側から抗議が来て撤収したというものでしたが、宮城美術館のほうは自分から「お伺い」を立てたというのですから、よけい情けないですねえ。

先週も書いたように、ルイヴィトンはリチャード・プリンスなど有名現代美術作家とのコラボ商品をたくさん発売しています。ご承知のようにリチャード・プリンスはマルボロ・マンなど、現代社会のアイコンと化した商業的イメージを(無断で)コラージュすることで、刺激的な作品をつくってきた作家です。僕も彼の作品は好きですが、しかし他社のアイコンを勝手に作品にするアーティストはOKで、自社のアイコンを作品に使われるのはNGって、ちょっとワガママすぎません? それとも有名アーティストはOKで、無名だからNGなんでしょうか。

タノタイガさんの『モノグラムライン』は、彼のサイトでじっくり鑑賞できます。ぜひ、ご覧ください!
http://www.taigart.com/works/archives/cat_056mono.htm

そういえば去年9月のブログで、メキシコの「ヴィトンハウス」をご紹介しましたが、これなんかもヴィトンさまは破壊命令とか出したんでしょうか。

『HEAVEN』公式カタログ、お待たせしました、あす(10日木曜)からAMAZON.CO.JPなどでも販売です!

先週までは広島市現代美術館のショップで先行発売していた展覧会公式カタログ、今週から書店にも流通しはじめます。今回の展覧会の展示に沿った内容ではありますが、写真のほかに、いままで単行本には未収録だった文章も多数収められていて、日本をめぐる僕なりの写真と文章の、約20年間のリミックス・アルバムといった趣になっています。展覧会に来れないほど忙しいみなさまも、ぜひご一読ください!



2010年6月2日水曜日

HEAVEN 特別ツアーのお知らせ!

5月22日から広島市現代美術館で開催中の『HEAVEN 都築響一と巡る、社会の窓から見たニッポン』。すでに中学生のリピーターがいる(笑)とか、興味深い噂が聞こえてきますが、来る6月19-20日(土、日)の二日間、『都築響一と巡る広島・山口ヘヴンの旅』という、特別ツアーを開催します。



東広島のゴテゴテ系ホラー喫茶をスタートに、いまやテレビ番組などでもおなじみ、抱腹絶倒の『女将劇場』を山口湯田温泉で鑑賞、オプションでスナック来夢来人探訪もあり、一泊した翌日は萩市でアウトサイダー・アーティストのアトリエに、吉田松陰のロウ人形見学まで詰め込んだ、超充実のツアーです。参加人数は20名限定!(申込多数の場合は抽選)。締め切りは6月10日。詳しい情報はチラシをご覧のうえ、急いでお申し込みください。もちろん、僕がツアコンやらせてもらいます!!!

お問い合わせ;広島市現代美術館 082-264-1121 
http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/

ダンボールの仏さま

6月1日から京橋INAXギャラリーで、『本堀雄二 —紙の断層 透過する仏—展』という小さな展覧会が始まっています。

本堀雄二さんは1958年神戸市生まれと言いますから、今年52歳。神戸在住の現代美術作家ですが、使用済みのダンボールを切り抜いて、輪切りのように貼り合わせることで立体の仏像を作るという、ユニークな作風です。



仏像をモチーフにした立体作品です。といっても、木や石、金属やFRPの彫刻ではありません。素材はダンボール。そ れも、スーパーやホームセンターで私たちが日常的に目にするダンボールを、そのままカットして使用しています。そ のためダンボールに描かれたミカンの橙色や野菜の緑色が随所に点在し、まるで剥げ落ちた仏像の古色にも似通った風 合いとなっています。 観音像や薬師如来、仁王像の輪郭をなぞって輪切りにしたダンボールが、幾層にも繋ぎ合わされ、仏像のかたちが出現 します。軽さ、ハニカム構造のユニークさ、隙間の表情を強調するために縦に重ねられ、その隙間も大きく取っている ために、真正面から見ると透けて何も見えなくなる錯覚に襲われます。横に回って見るに従い徐々に全体のボリューム が見えてきて、また違う造形が現れてきます。
(ギャラリー・ウェブサイトより




ダンボールを素材にするというと、ヘタウマみたいな作品を想像しがちですが、本堀さんの仏像は、そのミルフィーユみたいな透過構造といい、使用済みのダンボールの表面に残る色彩といい、切断面を焼いて黒ずみをつけた風合いといい、とうていダンボールとは思えない、でもよく見るとダンボール以外のなにものでもない、不思議な存在感にあふれています。

関西では知られた作家ですが、東京ではなかなか見る機会がないだけに、今回の展覧会はお見逃しなきよう!

http://www.inax.co.jp/gallery/

東京右半分:日暮里ダンス・ダンス・ダンス第二回


ソシアルダンスをテレビや映画の中で踊るのはプロのダンサーだが、ダンス業界を支えるのはもちろんアマチュアのダンサーたち。彼らアマ・ダンサーたちにとっては「デモンストレーション」と呼ばれる発表会が、なんといっても日頃の練習の成果を発揮する晴れ舞台である。


そこでデモンストレーションに必要となるのが、きらびやかなドレス。男性の場合はタキシードなど地味な衣裳なのでそれほど問題ないが、女性のほうはたいへんだ。この取材をしてみるまで僕も知らなかったが、「デモンストレーションでは同じドレスを二度と着ない」という不文律が、ダンスの世界にはあるらしい。なので、高価なドレスをそのたびに新調するわけにいかないから、「販売もするしレンタルもする」という店が必要になる。西日暮里には、そういう用途に応えるショップがたくさんあるわけだ。




今回お邪魔したのは『タカ・ダンスファッション西日暮里店』。駅から歩いて2、3分のビルに入っている。もともと大阪に本社があって、2002年に渋谷店を開いたあと、2005年に「東京の東西に店を出そうということで」西日暮里に店をオープンさせた。

http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

まぼろしのバッタもん

先週のブログでお知らせしたとおり、こないだの日曜日、六甲アイランドの神戸ファッション美術館で、トークをやらせてもらいました。ウィルス攻撃にあったとかで、美術館公式サイトもブログも5月頭から全部閉鎖中(!)という異常事態にもかかわらず、過去最高という150名ものお客さんが来てくれました。どうもありがとう! そしてもちろん、前日の土曜日、福岡市美術館のトークに来てくださった方々も。

ところで今回、神戸の『ファッション奇譚』と銘打たれた展覧会。「服飾に属する危険な小選集」なる、ちょっとスキャンダラスなサブタイトルがついていますが、実はほんとにちょっとスキャンダラスな事件が起こってしまっていました。どこの地元メディアも、美術メディアもぜんぜん取り上げてませんが。

今回の展覧会は、過去から現代まで、ファッションにおけるエキセントリックな面をいろいろな角度から取り上げた、なかなか野心的なグループ展です。で、僕の『HAPPY VICTIMS 着倒れ方丈記』も加えてもらっているのですが、このなかでかなりフィーチャーされているのが京都在住の現代美術作家・岡本光博さんです。その彼が今回、展覧会の目玉として用意したのが『バッタもん』と名づけられたシリーズのインスタレーション。ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチなど、世にはびこる高級ブランドの「バッタもん」(コピー商品)を素材にして、バッタを作ってしまったという、まあ日本人にしかわからないダジャレ・アート。しかしこれがうやうやしくガラスケースの中にずらりと並ぶさまは、ちょっとアイロニカルで微苦笑を誘うインスタレーションでありました。

展覧会側も、この作品が今回の企画を象徴するものと考えたようで、ポスターなどにも主役として扱われています(図版参照)。ところが! というか当然ながら、文句が来たんですねー、ルイヴィトンさまから。ほかのブランドからは、なんのお問い合わせも、おとがめもなかったのに。ヴィトンさまからは、バッタもんという表現でLV製品にかかわるコンセプトの作品を発表すること自体が、ブランドの信頼をはなはだしく損ない、偽造品の販売を肯定し、公序良俗に反する行為であるから、即刻展覧会から作品を回収し、ポスターやウェブサイト上の画像も削除せよ! じゃないと、法的手段を講ずる!!! とのお達しが、5月初旬にあったそう。



バッタもんの商品を作って売っているわけではないし、だいたいLVのバッタなんて商品にないと思うので、ヴィトンさまの言うように、これがコピーライトの侵害にあたるのかは、はなはだ疑問です。さらに、いちど展覧会に出品されている作品を、会期途中で引っ込めるというようなことは、よほどでないとありえません。当然ながら美術館や市側は、アーティスト・サイドに立って全面的に対決するかと思いきや・・・

ヴィトンさまから抗議を受けて、その日のうちに岡本さんの『バッタもん』はすべて展覧会場から撤収されてしまいました。ヴィトン以外の、抗議すら来ていなかったブランドの『バッタもん』も含めて、全部! なぜ? 抗議が怖いのなら、とりあえずヴィトンのバッタだけ隠せばいいのに。わけ、わかりません。もちろん、アーティストとしては納得いきませんから、特設ウェブサイトで9体すべての『バッタもん』が見られるようにしています。ぜひ、ご覧ください。これがいったい、ヴィトンさまの最高級イメージを、どれだけ損なうものであるか、見ていただきたいと思います。


会期途中で刷り直しさせられたポスターにも、バッタは影もかたちもありません。




展覧会を訪れてくれた方のブログから:

おりしも神戸では、こないだ日本最大級のルイヴィトン旗艦店がオープンしたばかり。そういうの、関係あるんでしょうかねえ。しかしファッションというのは、そもそも反逆精神から生まれる新しいスタイルです。いまやハイ・ブランドになったシャネルだって、もとは前時代的な女のからだを縛りつける衣裳からの解放を目指して生まれたデザインだったし、ポップだってパンクだって、「みんながヨシとするもの」への反抗から、すべてが生まれたわけです。

神戸は全国に先駆けて1973年に「ファッション都市宣言」をして(ほかにどんな都市がそんなことしたんでしょう?)、「以来、産業界、行政・市民、学界等が一体となりファッション性豊かな街づくりを推進し、神戸は日本を代表する「ファッションの街」として広く知られています」ということです(神戸ファッション協会ウェブサイトより)。産業界と一体になるのはいいですが、いまいちばん売れてるブランドに頭を下げ、いまから世に出る新しいクリエイティブなちからを排除しているようでは、しょせん”東京の次にファッショナブルで、洋服にお金つかうひとがたくさんいる”、ナンバー・ツーの町にしかなれないでしょう。

しかしヴィトンさまって、リチャード・プリンスとか村上隆とか、現代美術作家とコラボしてますよね。リチャード・プリンスはマルボロ・マンとか、メディアに出回るイメージを勝手に使った作品群を過去に多数制作して、コピーライトの侵害じゃないかとかなり問題になったり、またそれを逆手にとってアートの概念を揺さぶってきたのですし、村上隆はファインアートも漫画も、むりやり同レベルに落とし込む荒技で評価されてるわけしょう(たぶん)。そういうのはOKで、こういうのはダメって、なんかおかしくありません? 

たとえカチンときても、ソウルやバンコクの屋台じゃあるまいし、美術館でバッタもんを売ってるんじゃないんだから、笑って見逃すのが”アーティスティック”なんじゃないのでしょうか。展覧会なんて、そのうち終わっちゃうんだし。ヴィトンを一個も持ってない僕にはそう思えてしまうのですが、上質な商品を持って、上質な暮らしをしている方々って、そうは考えないんですかね。