2010年10月28日木曜日

東京右半分:ベイエリアに血の雨が降った夜

いまからもう何年前になるだろうか、プロレス全盛期の「聖地」といえばまず後楽園ホールがあり、そして武道館や東京ドームまでがいっぱいになる時代があった。

いま、プロレス業界は瀕死と言っても過言でないほど、元気を失った状態である。ほとんどテレビで見る機会もなく、有名団体ですら巨大会場を満席にするのが不可能な状態にあって、東京都内でプロレスを観戦できる場所が、都心から右半分のエリアに移りつつあることをご存じだろうか。


 熱心なプロレス・ファンには「なにをいまさら」と嗤われてしまいそうだが、いま定期的にプロレス興行が開かれているのは、後楽園ホールもあるけれど、それよりもディファ有明、新木場ファーストリングといった、湾岸エリアのイベントスペースだ。北千住や新宿あたりのライブハウスが会場になることもあるが、定期的に興行が打たれていて、しかもプロレスや格闘技がメインという場所は、まずディファとファーストリングの2ヶ所だろう。


会場面積1000平米を超え、客数も1200人前後を収容できるディファ有明はプロレス、格闘技のほかに音楽関係や、最近ではコスプレ・フェスティバルなどにもよく使われる。いっぽうの新木場ファーストリングは、中央にリングを設置した状態で370席と、収容人数がディファの3分の1。そのぶん会場レンタル料金も3~4分の1と手頃な価格のため、中小団体の試合会場としては、こちらのほうがおなじみ。


そしてプロレスというスポーツ興行は、有名選手が多数登場するメジャー団体だけがおもしろいのではない。無名の選手たちが、文字どおり血と汗と涙まみれで闘うマイナー団体の試合にこそ、醍醐味があるとも言えるのだ。


(右半分、来週は第5週のためお休み、次回更新は11月5日です!)

デュッセルドルフの「光のベンチ」

 デュッセルドルフ中心部にあるホフガルテン。デュッセルの「緑の肺」とも呼ばれる、素晴らしく広い公園。というより、ほとんど森ですが、その遊歩道で見つけたのがこれ。夕闇に目映い光のベンチです。

ステファン・ズース(Stefan Sous 1964年アーヘン生まれ)というドイツの現代美術作家が、2002年に設置したこの作品。『UV-A UV-B』という名前が示すように、蛍光灯をアクリルで保護したチューブによって、ベンチ全体が作られています。


もともとは一定期間だけの展示だったのが、好評だったのか永久展示されることになったそう。作品といえども、もちろん使用可なので、公園散策に疲れたひとが足を休めたり、自転車便のライダーがスナックを頬張ったりしています。まぶしいほどに純白の光の繭(まゆ)が、座るひとびとをほんわり包み込むのを見ているのは、それだけで楽しい体験。冬は、ちょっと暖かいし。露出狂のひとも、かっこいい写真が撮れそう!

明暗分かれるケルンのふたつのミュージアム

ベルリンにお株を奪われるまでは、ドイツ現代美術シーンの中心だったケルン。いまケルンを訪れる美術、建築ファンが真っ先に向かうのは、完成まで600年かかった奇跡のケルン大聖堂・・・じゃなくて、そのすぐそばに2008年に完成した通称「コロンバ」—— 聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館だろう。



中世からローマ時代にまでさかのぼる遺構の上に、というか遺構を包み込むように建てられた美術館は、スイスの建築家ペーター・ズントーによるもの。徹底的にクールなデザインでありながら、古風な建築物が残る周囲の景観と意外にしっくり調和するテイストというか、繊細な素材選びと空間構成のセンスはさすがに素晴らしい。そして内部は大きな壁面に、基本的には非常に抑えた数の作品が、細心のポジショニングで展示されている。それは最高に美しい。美しいんだけど・・・作品数が少ないんですよ!


19世紀に当地で設立されたキリスト教美術協会が、多年にわたって収集してきた宗教美術コレクションに、いくつかの個人コレクションが寄贈されて、いまでは中世からヨーゼフ・ボイス、ウォーホルなどの現代美術作品まで、ドイツ有数の広範なコレクションを持つコロンバ。それをこれだけちょっとしか見せないのは・・・・個人的には納得できない、どうしても。いくらハコが素晴らしくても。


とりわけこの十数年だろうか、美術館建築が現代建築業界のなかで非常に重要な位置を占めるようになり、有名建築家による新しい有名美術館が世界各地に誕生するようになった。「どんな作品が見られるのか」ではなく、「どの建築家がつくったのか」が、いまや美術館の「格」をはかる上で最重要ポイントになった。そういう新しい美術館を、いままでずいぶん見てきたけれど、正直言って見れば見るほど違和感が募ってくる。だって美術館は、そもそも美術作品を見せる場所、空間であって、建築作品じゃないはずだ。


美術と建築の融合という、だれにも否定できない正論のコンセプトによって次々に出現する”ニュー・ミュージアム“は、しばしば作品をたくさん展示するのが難しかったり、搬入搬出に手がかかったりする。「かっこいい建築より、ただの真っ白で平らな壁をもっとたくさんくれ!」と内心思っているアーティストも、けっこういるのではないか。だって展覧会はアーティストのものであって、建築家のものではないのだから。


僕の仕事は本を作ることだけれど、そこでも同じような問題にいつも直面する。画像やテキストと、アート・ディレクションの綱引きだ。取材してきた素材をなるべくたくさん載せたい著者と、なるべく素材を絞って効果的に見せたいデザイナーのせめぎ合い。それは本作りの上で苦しくも楽しくもある健全なプロセスだが、ときとして(というか最近はしばしば)、アート・ディレクションのほうが力関係で上に立っているのではないかと思われる誌面に出くわす。かっこいいけど、なにを言いたいのかわからない誌面。字が小さすぎて読めないレイアウト。そういうのはみんな著者じゃなくてデザイナーが、大画面のモニター上で描き出した「絵」だ。


ズントーの傑作とされるコロンバの展示空間を歩きながら、僕はどうしてもそういうことを考えてしまう。もし時間があったら、グーグルで「ケルン コロンバ」をサーチしてみてほしい。検索結果にずらりとヒットするのは、そのすべてが建築ファンによるブログや記事であって、所蔵、展示されているコレクションについてきちんと語られているサイトは、ほとんど見つからない。

ケルンにはもうひとつ、比較的最近に開館したミュージアムがある。2005年にオープンしたケルン・カーニバル・ミュージアムだ。


日本ではそれほど知られていないが、ドイツ人のカーニバル好き、特にケルン、デュッセルドルフ、マインツなどライン川沿いの町で冬になるとひらかれるカーニバルには、「真面目で勤勉」というドイツ人のイメージを根底から覆しかねない、狂ったパワーがあふれている。


歴史をさかのぼれば中世に端を発し、19世紀からは現在のように何十台もの山車が繰り出すスタイルが定着したドイツ式カーニバル。多くのドイツ人が「これが楽しみで一年我慢している」と目を輝かせるいっぽう、ひとにぎりの知識人を「これがなければケルンも居心地いい町なのに」と嘆かせる、それほどケルンにとって重要な祭りである。


毎年11月11日11時11分、カーニバルは公式に幕を開け、年明けを挟んだクライマックスである2月末のパレードまで、お祭りは延々と続く。「カーニバルは積極的に参加するか、その期間中ケルンを離れているか、どちらかしかないんです。距離を置いて見てるなんて不可能」と、ケルン在住の日本人のひとりは溜息をついていた。ずいぶん以前から現地の日本人学校生徒も行列行進に参加していて、「わたしたちもむりやり仮装させられて、参加しなきゃならないんですぅ」と、日本文化会館のスタッフも恥ずかしがっていた。


そういう輝かしい(?)歴史を持つカーニバルのすべてを見せてくれるミュージアムは、ケルン中心部のすぐ外側、静かな住宅街にひっそり建っている。一見ただの倉庫。いつも観光客が群がるコロンバとちがって、外には隣棟の倉庫に用があるらしきクルマが何台か駐車しているだけ。おそるおそるドアをくぐると、だだっぴろいミュージアム内部には、やっぱりだれもいなかった。

見渡せばコロンバよりも広くゆったりした展示空間の真ん中に、巨大な山車が鎮座している。周囲にはユーモラスな行列用コスチュームを着用したマネキンの列。一段高くなった展示エリアには、19世紀から現在にいたるカーニバルの資料がずらりと並び、映画やビデオでドイツ人らしからぬ(?)盛り上がりの様子を鑑賞することもできる。安っぽいアクリルケースに詰め込まれた道化の衣装や、磁器人形や、写真やビデオをじっくり楽しんで1時間ほど滞在したあいだ、入ってきたお客さんは3人だけだった。



ケルン中心部の、すごく立派な日本文化会館でレクチャーを終えて、ご当地ビールを飲みながら話をしてみると、宴会に参加してくれたドイツ人、日本人のだれひとりとして、カーニバル・ミュージアムに行ったことのあるひとはいなかった。そしてほぼ全員が、コロンバには行っていた。




世界のそこら中で、いまこういうことが起こっている。「博物学」という輝かしき知的冒険の産物だったミュージアムは、いま、まったく別のものに生まれ変わろうと必死だ。ほとんど強迫観念のように、ひたすらインタラクティブ=観客参加型の”エデュテイメント”を目指す博物館。そして中味よりも容器ばかりが語られる美術館。

もしかして、こういうのこをを僕らは「ハコもの」と呼ぶべきではないのか。

来週はベルリンのお話を。


2010年10月20日水曜日

フランクフルト、朝10時


異常気象の日本とちがって、こちらドイツはとっくに冬。ちゃんと!寒いです・・。今週はドイツ、ハンガリーどさまわりのため、あまり記事をお届けできません。ご容赦ください! 楽しいネタ、たくさん持って帰ります。 ちょうどこの時期ドイツにいらっしゃる方は、トークにもぜひ遊びに来てください!

1020 フランクフルト大学、キャンパス:ボッケンハイム、ホールB
Universität Frankfurt/M.
Campus Bockenheim
Hörsaal B 
Senckenberganlage 31
60325 Frankfurt am Main
Tel: 0 69 / 798 – 2 32 87

1021 デュッセルドルフ美術家協会マールカステン
ヤコビハウス・ヤコビルーム
 Künstlerverein Malkasten, Düsseldorf
 Jacobihaus, Jacobizimmer
Jacobistr. 6a
 40211 Düsseldorf
 Tel: 02 11 / 7 37 08 09Mobil: 0170 / 900 7663
1022 ケルン日本文化会館
 Japanisches Kulturinstitut (The Japan Foundation)
Universitaetsstr. 98, 50674 Köln
 Tel. +49(0)221 9405580, Fax +49(0)221 9405589
1023 ベルリンproQm(書店)
Almstadtstr. 48-50, 10119 Berlin
 Tel: 0 30 / 24 72 85 20

1026 ブダペスト
 Mai Mano House of Photography

HELL刊行記念トークショー、受付開始

『HELL 地獄の歩き方<タイランド編>』(洋泉社)刊行記念 

青山ブックセンター六本木店でのミニ・トーク、受付が始まりました。席数がほんとに限られてるので、お申し込みはお早めに!

「都築響一ワイドショー」VOL・6
開催日時 2010月10月29日(金)19:00〜
会場:青山ブックセンター六本木店
受付開始日: 2010年10月17日(日)10:00~
http://www.aoyamabc.co.jp/45/45215/


東京ノーザン・ソウル:竹ノ塚の昼と夜 3

東京をひとつの国と考えれば、足立区は最北端のノース・カントリー。そして足立区でいちばん北の端、竹ノ塚はそのランズ・エンドだ。
 



こんなにたくさん団地があって、こんなにたくさんひとが住んでいて、こんなに都心から近いのに、ほとんど知られていない、知ろうと もされていない町。メト ロ東京の秘境とも言うべき竹ノ塚を、先週まで2回にわたって探索してきた。今回はその竹ノ塚の駅前にスナックを構えること37年間。この町の移り変わりを カウンターから眺め続けてきた小宮行雄さんに、竹ノ塚の今昔をお聞きする。奥様とともに店を守りながら、「マジックバー」などという言葉が流行するはるか 以前から、マジックのプロとしても活躍してきた異色のマスターだ。

http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

2010年10月13日水曜日

HELL 地獄の歩き方 タイランド編 発売!


これまで数年間にわたって、ひっそり取材を続けてきた、タイの田舎の地獄庭園。ついに写真集、というか飛びきりエグいガイドブックになりました! 『HELL  地獄の歩き方・タイランド編』、今週末発売ですが、すでに店頭に並んでいる書店もあるかもしれません。


地獄に行きたい人間は、あまりいない。
なるべくイヤなこと、体験したくないことを何百年、何千年にわたって、何億人もが考え抜いた、究極のネガティブ・イメージ。それが地獄というものであるはずだ。
それなのに世の中には、死んでからしか行けないはずの地獄を、いますぐ味見してもらおうと、手間ヒマかけて再現してしまうひとたちがいる。
プロのアーティストではなく、そのへんのコンクリート職人や、お寺の信者たちが、ちからを合わせて造りあげた苦しみのヴィジョン。シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。現世の片隅にひっそり毒花を咲かせる、そんな地獄庭園に魅せられて、長いこと撮影行を続けてきた。
これをアートと呼べるのかどうか、僕にはわからない。けれど世の中に「アート」という名前で流通している商品よりも、はるかにリアルな思いのカタマリがここにある。  
(序文より)

その、あまりにグロテスク、そして敬虔な仏教徒の国にもかかわらず、往々にしてエロティックな立体作品の数々は、とてもここでは紹介しきれないので、専用の紹介サイトを立ち上げました。とりあえず、ご一読ください!




一時は毎月通うほどハマっていたタイの田舎めぐりが、ようやくかたちになったかと思うと感無量ですが、「またバンコク行くの?」と疑惑の目で見ていた友人諸君も、これでようやく納得してくれるかと・・・。刊行を記念して、今月29日にはトークショーも開きます。今週日曜が受け付け開始なので、お早めのご予約を。

『HELL 地獄の歩き方<タイランド編>』(洋泉社)刊行記念 
「都築響一ワイドショー」VOL・6
開催日時 2010月10月29日(金)19:00〜
会場:青山ブックセンター六本木店
受付開始日: 2010年10月17日(日)10:00~

タイと言えば、おいしいご飯だのマッサージだの、お買い物だのと浮かれるのが当然ですが、たまにはバンコクにも、ビーチリゾートにも背を向けて、こんな「地獄めぐり」の旅はいかがでしょうか。街のスタンドでは死体雑誌がふつうに売られ(最近はあまり見ませんが)、夜の繁華街は世界最強の売春&ドラッグ無法地帯と化す、「微笑みの国」のダークサイドを支えるメンタリティが、ちょっとは理解できるようになるかも。


駒込ホテル・アルパ、突然の閉店!

オールドスクールのラブホテル・ファンにはおなじみ、駒込駅前のホテル・アルパが10月12日で営業終了、閉店というニュースが飛び込んできました。『ラブホテル Satellite of LOVE』でも取材させてもらい、外国のメディアもずいぶん連れていって大好評だった、アルパは真にオリジナルなジャパニーズ・デザインの粋ともいうべき快楽空間でありました。

施設の老巧化、売り上げの減少など、閉店の原因は複合的なものでしょうが、この4月に従業員仮眠室に強盗が押し入り、寝ていた従業員に重傷を負わせたうえに売上金を奪ったという強盗致傷事件があったことも、影響しているようです。

ファッション・ホテルとかブティック・ホテルとか、オブラートに包まれた名前と、シティホテルと大差ない“お洒落なインテリア”の、どうでもいいラブホばかりがはびこるなか、またひとつ貴重なデザインの名店が消えてしまいました。だれにも気に留められず、惜しまれもしないままに。

ただのオフィスビルや公会堂とかは保存運動に大騒ぎする建築史家たちも、こういう本来の「文化遺産」は完全無視。僕らにできることは、アルパのようなクラシックなホテルを、せめて営業中のうちに一軒でも多く訪れることしかありません。次に突然、消えてなくなってしまう名店はどこなのでしょう。川崎・迎賓館、西蒲田・王城、大阪京橋・ホテル富貴・・・きょうはまだ営業中のクラシックなラブホテルを、ひとりでも多くのみなさんが体感できますように。

ホテル・アルパはいまのところ、まだウェブサイトは閉じられていないようです。
 
いまから10年以上前に撮影させてもらった、ホテル・アルパの絶品インテリア・デザインはこのとおり!


ね、行っときゃよかったでしょ!


『東京夜景散歩』で、夜のちい散歩


洋泉社の新刊ムック『東京夜景散歩』。「昼には見えない、夜だけの東京を見に行こう」という趣旨で、いろんなひとがいろんな夜の東京を歩いたガイドブックですが、僕も『東京右半分、終電後の世界』と題して、湯島、浅草、北千住あたりの深夜を4ページほど、ちい散歩してます。ウェブ連載の『東京右半分』で紹介した場所がほとんどですが、こういう感じでまとめ直してみると、右半分の終電後って最近充実だなあと実感します。ゴールデン街や西麻布に飽きちゃった夜遊び人のみなさんは、ぜひどうぞ!

東京右半分:東京ノーザン・ソウル:竹ノ塚の昼と夜 2

昼間は単なる地方都市の駅前風景となんら変わらないのに、夜になると一変。とりわけ西口の駅裏一角が、いきなり東京有数のディープな歓楽スポットに変身する竹ノ塚。


数ブロックの小さなエリアに、一説によればフィリピンパブが60軒あまり。そのほとんどが朝方まで店を開けているし、日本人の女の子を揃えたキャバクラもあれば、健康という看板があまりにしらじらしいマッサージ店もやたらに目立つ。

 新宿でもなければ、池袋でも錦糸町でもない、竹ノ塚という「夜の秘境」を先週に引き続き、事情通のおふたりに語っていただく。出版社を経営する比嘉さん、 編集プロダクションのオーナー赤木さん。どちらもこの近辺で育ち、いちどは町を離れたのが、最近になって遊びに戻ってきたツワモノ。知る人ぞ知る、夜の冒険家だ。


http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

ドイツ、ハンガリー・トーク・ツアー詳細

先週お知らせした、ドイツとハンガリーのトーク・シリーズ、詳細が決まりました。もしこの時期、現地にいらっしゃるみなさまは、ぜひ遊びに来てください!



1020 フランクフルト大学、キャンパス:ボッケンハイム、ホールB
Universität Frankfurt/M.
Campus Bockenheim
Hörsaal B 
Senckenberganlage 31
60325 Frankfurt am Main
Tel: 0 69 / 798 – 2 32 87

1021 デュッセルドルフ美術家協会マールカステン
ヤコビハウス・ヤコビルーム
 Künstlerverein Malkasten, Düsseldorf
 Jacobihaus, Jacobizimmer
Jacobistr. 6a
 40211 Düsseldorf
 Tel: 02 11 / 7 37 08 09Mobil: 0170 / 900 7663
1022 ケルン日本文化会館
 Japanisches Kulturinstitut (The Japan Foundation)
Universitaetsstr. 98, 50674 Köln
 Tel. +49(0)221 9405580, Fax +49(0)221 9405589
1023 ベルリンproQm(書店)
Almstadtstr. 48-50, 10119 Berlin
 Tel: 0 30 / 24 72 85 20

1026 ブダペスト
 Mai Mano House of Photography

『ミクロの世界』の巨大生物たち


前に『デザイン豚よ木に登れ』でも紹介した富山市在住の電子顕微鏡マスター、西永奨さんの作品を大々的にフィーチャーしたムックが出ました。ニュートン・ムックの『電子顕微鏡で見るミクロの世界』。試料(被写体)に手を加える必要がなく、そのまま観察できる走査型電子顕微鏡という、一種の超高性能スキャナーを駆使して捉えた、驚くべきイメージが満載です。

 西永氏は走査電子顕微鏡を使用して、さまざまな試料を拡大撮影してきた。こういう技術系の世界はとかく「何十万倍まで拡大できるか」みたいな競争に向かいがちだが、彼の作品のユニークなポイントは20倍から百数十倍までの、普通の顕微鏡どころかルーペでも見えそうな低倍率にこだわっているところにある。わざわざ電子顕微鏡という高性能なマシンで、こんな低倍率の画像を得ようとする行為自体が、技術系の人間には理解できないかもしれない。
 しかしここに収録した、たとえばアリの頭とかハエの吻とかのごく日常的な物体は、ルーペや光学望遠鏡で覗く拡大画像とはまったく別次元の、素晴らしくクリアーな解像度をもって我々の前に立ち現れる。通常の拡大画像とはちがって、スキャナーのように凹凸にすべてピントが合い、しかもモニターに映し出されるために単色となるイメージは、単なる物体の拡大像にはおさまらない、一種独特にシュールな神秘感覚を放つ。
 一見アートとは無縁のようでありながら、そのイメージは凡庸なアーティストの想像力をはるかに凌駕する、きわめて芸術的な画像へと結実しているのである。
(『デザイン豚・本文より』)


A4版の大画面に「電子顕微鏡・厳選画像 オリジナル・ポスター」までついて、たったの2300円。身近な生きものや物体の、ミクロの眼で見た驚異的なイメージを眺めるだけで、購入の価値あり。しかし調べてみると、最近の走査型電子顕微鏡はちょっと大きめのデスクトップ・パソコンていどの大きさで、値段も500万円ぐらいで買えるらしい。欲しいです!