その沈昭良さんの写真集『STAGE』がこのほど台湾で完成、まもなく日本でも入手できそうです。ハードカバー、大判の画面に収められた「台湾式デコトラ・ステージ」は、カラフルでポップで、しかも哀愁に満ちていて、なんとも言えません。
“台湾綜芸団”(Taiwanese Cabaret タイワニーズ・キャバレー)とは、いわゆる移動するショー劇団のこと。1970年代から台湾における冠婚葬祭の場で活躍しており、初期においては現在でも使用されている組立式特設ステージだったが、改装トラックもあり、照明と音響設備を備えたオープン式の“ステージトラック”が出現した。そして時代の進歩とともに、経営者や観衆の側から照明や音響設備に対する要求が高まり、今日のきらびやかな油圧電動式ステージトラックに発展した。 ショーの演目内容については、初期には歌と踊りのショーが主体で、歌手の衣装も一般の室内劇場で見られるような華麗なドレスに類似したものだったが、近年になるとセパレート式のビキニスタイルが普通となった。ショーの内容も人目を引く新しい演目が次々に生まれ、歌手以外にダンサーを従えた歌謡ショー、女性のパイプダンス、雑技、マジック、民俗芸能、ボディビル男性のショー、更には女装した男性のショーなど、多種多様である。 また、一定時間内に近隣する数箇所を回ってダンスショーを演じたり、葬儀や廟宇の祭りの隊列に加わってショーを演じたりする。 出演者は、公演場所を転々とする臨時の寄り合いグループである。歌手は若い世代が歓迎される傾向にあり、ある程度年齢を重ねた歌手は司会者や経営者に転じたり、結婚後引退あるいは他の業界に転身したりする。 このシリーズの作品は4×5インチフィルムで撮影されている。撮影対象は今の台湾各地で使用されている大型トラックを改装した移動式ステージである。この“ステージトラック”の台数については正確な統計はないが、実際に営業中の台数は台湾全土で600台を超えるものと推測されている。レンタカー方式が採用され、価格は車の大きさや新旧の程度によって異なり、貸し出す側は借り手の要求に基づき、指定された時間に指定場所まで車を運転して行って引き渡す。 本展で展示する作品は、台湾各地の“台湾綜芸団”が、1994年頃から研究と改装を重ねて今日の姿に至った大型トラックを改装した油圧電動式ステージトラックを撮影した英姿である。 独特の業態、濃厚な文化的な息吹き、きらびやかな色彩、童話のような舞台背景、そして自由奔放な発想。この“綜芸団”という台湾特有の産業は、時間と空間を越え、ある時は平面的に、またある時は立体的に、縦横無尽の展開を見せながら、見る者の想像力をかきたて、観衆と一体化していく。
(2010年・銀座ニコンサロンでの展覧会のウェブサイトより)
沈昭良・公式サイト http://www.shenchaoliang.com/