僕が彼女を紹介されたのは、アスペクト社から2000年に刊行された『Street Design File』というシリーズの中で、オトナのおもちゃを集めた『Portable ECSTACY オトナのおもちゃ箱』をつくったときでした。
「下品」の象徴のように見られていたオトナのおもちゃを、それまでだれも見たことのなかったようなクールなデザイン・ブックに仕立てたくて、凪ちゃん(と呼ばせてもらいます、親しかったので)にお願いしたら、すごくおもしろがって引き受けてくれたのが、つきあいの始まりでした。考えてみればそのとき、彼女はまだ20代だったんですねえ。
そのあと彼女には『Sperm Palace 精子宮』という、鳥羽秘宝館の写真集もデザインしてもらい、さらに彼女がずーっと集めていたリバティーンのコレクションといっしょに『Happy Victims 着倒れ方丈記』にも出てもらいました。
あれほど突き抜けた広告表現は、このあと(少なくともしばらくは)マスメディアに登場すると思えません。それを時代のせいとか、彼女の奔放な人間性のせいにするひともいるのでしょうが、それはぜんぜんちがうと思います。世間が彼女を見る目とは正反対に、素顔の彼女はものすごく真面目に表現を突き詰めていって、ときには突き詰めすぎてみずからを傷つけてしまう、いわば精神の自傷癖にとらわれた、繊細すぎるほど繊細なアーティストでした。
「どんな表現か」ではなく、「どのタレントが出るか」ばかりが重要視される、いまの広告界の風潮の中で、たった10年足らずの短い時間に彼女が駆け抜けた世界を、ひとりでも多くのひとたちに見てもらえたらと願います。
2011年10月18日(火)〜 11月18日(金)
11:00a.m.-7:00p.m. 日曜・祝日休館
http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/g8_exh_201110/g8_exh_201110.html