ヴェネツィア・ビエンナーレとか、艾未未(アイ・ウェイウェイ)とかアニッシュ・カプーアとかが厳めしく語られる中で、あの『ニャン2倶楽部』のエグ味にあふれた表紙とか、とんでもなく過激な投稿イラストが、ハイブラウでインテレクチュアルなART iTの読者にどう受け取られるのか、興味津々というか・・笑。しかもこれ、英語版もありなので、「ぴんから体操」とか「ぬるぴょん」とか「露出投稿」とかが、どんな英訳になって出てくるのか、楽しみすぎ! 生きた英語の勉強にもなる・・かもしれないので、英語版もチェックしてみてください。
「露出投稿雑誌」というメディアがあるのを、ArtItを読むような方々はご存じだろうか。「露出」といっても写真の露出=exposureではなくて、「露出狂」の露出=exhibitionismの露出。つまり野外や公共の場所で、あられもない姿を晒し、それを撮影した画像によって構成される雑誌のことである。
シロウトによる、しかも「露出系」に片寄ったセクシュアルな投稿によって一冊の写真雑誌がつくられるようになったのは、1984年の『投稿写真』(考友社出版、のちにサン出版)あたりからだと思われる。高部知子という未成年の清純派アイドルが、性交後のけだるさを漂わせつつベッドでタバコを一服、という「にゃんにゃん写真」が、当時の交際相手によって『FOCUS』編集部に持ち込まれ、大騒動となったのを記憶している方も多いだろう。
90年代のデジカメの急激な普及と見事に歩調を合わせながら、80年代に創刊された投稿写真誌はどんどん内容を過激化させていったのだが、「こんなの普通の書店で売っていいんですか!」と驚くような写真が、雑誌どうし、投稿者どうしの競い合いのごとく毎号誌面を飾っていたいっぽうで、多くの投稿写真誌には後ろのほうの1〜2ページを「投稿イラスト」にさいていた。そしてほとんど気に留められることのない、添え物のような投稿イラスト・ページへの掲載をめざして、人知れず夜ごと画用紙や葉書に向かう「投稿職人」たちがいたのだった。
投稿写真誌のなかでも、その過激さで他を大きく引き離す『ニャン2倶楽部』という雑誌がある。白夜書房系列のコアマガジンから1990年に創刊された『ニャン2倶楽部』は(愛読者は「ニャンニャン」ではなく、親しみを込めて「ニャンツー」と呼ぶ)、その後『ニャン2倶楽部Z』『ニャン2倶楽部ライブWindowsDVD』『ニャン2倶楽部うぶモード』など、姉妹誌を10誌以上に増やしながら、多くの読者と投稿者の支持を受け、創刊20周年を超えた現在も継続中である。
『ニャン2』の投稿イラスト・ページを初めて見たのがいつごろなのか、記憶は定かでないが、ひとつの作品がほとんどの場合、名刺にも満たない小さなサイズで10数点から20点以上もびっしり並べられた誌面を見たときの、異様な印象はよく覚えている。たとえば夕刊紙の挿絵や、エロ漫画誌を飾るプロのイラストレーターとはまったく異なる、荒い、稚拙な、しかし恐るべきオブセッションとエネルギーにあふれた画面。それは名もない表現者たちによるアウトサイダー・アートであり、苦しいほどの妄想に苛まれる悪夢のパノラマだった。