2011年7月20日水曜日

東京右半分:錦糸町リトル・バンコク 1

錦糸町……と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。アジアン・タウン、楽天地、場外馬券売り場、風俗、そしてスカイツリー……そのどれもが正しくて、どれもが一面でしかない。錦糸町は上野と並んで、東京右半分を代表する重層的なメガ・タウンである。

いっとき、錦糸町は「リトル・マニラ」と一部で称された時代があった。南口の丸井の裏あたりには、飲食ビルの中にフィリピンパブがひしめきあい、路上ではなぜかパキスタン系の客引きが「シャチョウ、シャチョウ」と声をかけてくる、異様な光景が夜ごと展開していたものだった。

フィリピン娘の入国審査が厳しくなるにつれ、かわって目立ってきたのがタイである。それもフィリピンとちがって、夜の店だけでなく、語学教室、料理教室、レストランに食材店、マッサージ(錦糸町だけで30軒以上のタイ・マッサージ店があるとか!)などなど、これこそ「リトル・バンコク」と呼びたいタイ・カルチャーが、すっかりこの街には根づいているようなのだ。




地元のタイ人によると、「いまはタイのひとも減ってきて、かわりにロシアのパブとか増えてますよ」ということだが、数年前にはバンコクにアパートも借りていたほどのタイ好きである自分から見ても、錦糸町は東京でいちばん「タイの色」が濃い地域に間違いないと思う。足立区竹ノ塚がフィリピンで、高田馬場がビルマであるように。

前から気になっていた錦糸町のタイ事情を、この地に暮らし、商売しているタイ人に案内してもらいたい! というわけで、2週間にわたってお送りする「錦糸町リトル・バンコク・ツアー」。そのスタートは錦糸町に、そして日本にタイ文化を紹介した立役者のひとりでもある、松本ピムチャイさんのお話から。




「ピーケイサイアム」という会社を経営し、タイの野菜や果物、飲料などの食材を輸入するとともに、錦糸町・目黒・成田・新宿などに正統派タイレストラン『ゲウチャイ』を運営する、おそらく日本でいちばん有名なタイ人ビジネスパースンである。そのピムチャイさんがタイと日本の修好120周年を機会に、2007年に設立した『タイ教育・文化センター』で、たっぷりお話をうかがった。