2010年1月6日水曜日

芸術新潮・創刊60周年記念特大号:わたしが選ぶ日本遺産

・・・というようなハイクラスなタイトルで、文化人の方々がすばらしい日本の風景を、おのおの3つずつ紹介しているなかで、色もの(たぶん)として選ばれた僕は、その使命を果たすべく、「地方のスナック街・秘宝館・ラブホテル」を選んで、その理由を書きました。




歳をとってくるにしたがい、どんなにお金があるよりも、有名であるよりも、血糖値や尿酸値を気にすることなしに、好きなだけ飲んで食べられて、すれっからしのママさんの、シワだらけの目尻にうっすら涙を浮かべさせるほど歌がうまくて、毎日毎晩きっちりドッピュンできる、そんな漢(オトコ)のほうが百倍羨ましいと思うのは、僕だけだろうか。
もう30年間あまり、ほとんど仕事で旅をしてきた。日本の田舎から田舎へと、飽きもせずめぐってきて、いちばん旅情を感じる瞬間。それは夕陽に光る棚田とか、森の奥に見え隠れする朱色の鳥居とかではない。田んぼの中にポツンと、しかし異様なデザインで浮き立つ無国籍ふうのラブホテル建築とか、知らない街のビジネスホテルに宿を取り、飲まなきゃ寝られないけど、どこに行けばわからない・・と思案しながら、ドアを開けてみる勇気もないまま往復する書き割りのようにちゃちなスナック街とか、そういう光景のなかに身を置くときだ。

というわけですが、もちろんほかのページはうっとりするほどストレートに美しい遺産風景が満載なので、品のいい方も楽しめます!