このひと、ほんとに演歌歌手?――田川寿美さんをはじめてテレビで観たときは、驚いた。NHKの歌謡番組だったと思うが、豪華なステージに着物姿であらわれて、歌ったのは『島唄』。あの難しい歌を、へんに演歌っぽく味つけせずに、きれいに歌いきったのだが、胸声(ファルセットではない実声)から、ファルセット(頭声)へとナチュラルに移行するその歌いかたは、むしろオペラ歌手のベルカント唱法を思わせる、演歌歌手としてはかなり異質なものだった。でも、いでたちはこれぞ「ザ・演歌」みたいな着物に、アップのヘアスタイル。そのアンバランスな魅力に、すごく興味がわいた。
田川寿美は、いま30代から40代にかかる世代の女性演歌歌手のうちで、もっとも技術的にすぐれたひとりだ。ものすごくテクニカルで、それをさらりとやってみせる。だからいざカラオケで歌おうとして、はじめてその難しさに気がついたりする。
そしてシロウトがカラオケで歌いやすい曲ばかりがヒットする時代にあっては、こんなにうまいのに、セールスが実力についてこない。もっと売れていいはずなのに・・・彼女のステージを観ていると、いつもそう思ってしまう。いま、この時代の演歌界に生きることの幸と不幸を、このひとは両方いっぺんに背負い込んでいるのではないだろうか。
しかし表紙のタイトルもろもろ、興味深いですねー(笑)。