2011年6月2日木曜日

こ、このパクリは・・・

このところツイッターやブログで話題になっている、強烈なパクリ・ネタ。もうご存じの方も多いと思うので、短く紹介しておくだけにしますが、そもそも話が盛り上がったというか、一気に広まったのは、2011年ビルボード・ミュージック・アワードでの新曲『Run The World (Girls)』のパフォーマンス。

最高にキレのいいダンスと、プロジェクションされた映像が一体となったパフォーマンスは、さすがに見事としか言いようがないのですが(冒頭、賛辞の部分が3分ぐらいあるのでご注意)・・


番組の放映直後から、このステージがイタリアの歌手ロレッラ・クッカリーニが2010年にサンレモ音楽祭で披露していたパフォーマンスのパクリではないかという指摘が、寄せられるようになったわけです。


たしかにコンセプトはまったくそのものなんですが(ただしダンスもルックスも、ビヨンセのほうが数百倍・・)、この指摘に対してビヨンセが反論。パクったのではなく、クッカリーニの映像を見て感激、演出チームを紹介してもらって、今回の演出を依頼したのだということでした。

しかしこのロレッラ・クッカリーニのステージが、なんと日本のパフォーマンス・アートユニット『KAGEMU(カゲム)』のパクリであることが判明! とりあえず、その大元のパフォーマンスをご覧ください。


これはもう・・偶然似ちゃったとか、言い訳しようのないモロ・パクリですねえ。音まで一緒だし・・。

『KAGEMU』はサカクラカツミとハナブサノブユキというふたりのアーティスト/パフォーマーによるユニットで、もともとサカクラさんが1999年に結成したダンス・ユニット『ORIENTARHYTHM(オリエンタリズム)』が母体になっています。ヌンチャクを駆使した「ストリート・ヌンチャク」のシリーズで海外でもよく知られているので、ご覧になったことのある方もいらっしゃるかと。

『KAGEMU』の『Black Sun』は2009年の作品で、同年7月の時点ですでにYouTubeにアップされているので、言い逃れしようがないでしょう。


こちらがKAGEMU/ORIENTARHYTHMのウェブサイト。痛切なステートメントをお読みください——

私にとって「Black Sun」は私が今までしてきた全てのことの集大成です。
私の脳の中の独創的創造力を自分以外の人に説明することはとても難しく不可能なことだと思います。


その"独創性的創造力"を誰もが理解できるように形にしたのが「Black Sun」です。
「Black Sun」はとても大切な宝です。


「この宝さえ持っていれば必ずいつかこの作品を多くの人が認めてくれるようになる」と信じて、
この強い気持ちのみを心と身体のささえにしてここまでがんばってきました。
その宝を横からひったくられ、とても有名なアーティストたちに世界的なイベントで披露されてしまった。


なぜこんなことができるのか?よくこんなことができたものだと不思議に思います。
私の今の気持ちはとても言葉では表せません。


2011年5月26日
サカクラカツミ

そして問題のクッカリーニ、そしてビヨンセの演出を手がけたのは、ニューヨークを拠点に活躍する、実は日本人の映像作家「Kenzo Digital」ことKenzo Hakuta氏。ナム・ジュン・パイクに学んだメディア・アーティストだそうです。

しかい世にパクリは数あれど・・小が大をパクるのはお笑いですんだとしても、大が小をパクっちゃ笑えません。カゲムのふたりだけじゃなくて、ビヨンセだって被害者ですよね(もしカゲムの存在を知らなかったとすれば・・まあ知ってたらやらなかったでしょうし)。

ちなみにKenzo氏、2009年には「世界初のエクスペリメンタル・ヒップホップ・オペラ・ムーヴィ」と銘打った、かなり興味深いプロジェクトを手がけていて、公式ウェブサイトでは音源もフリー・ダウンロード可能。映像も音も、これがかっこいいんですよねえ。



僕はその昔、『サルまねクリエイター天国』なんて連載をやっていたことがありますが、当時作った標語——「パクリ一発、怪我一生」という言葉を、Kenzo氏には噛みしめていただきたいものです。せっかく、こんなにいい仕事してるのに、残念です。ほんとにもったいなさすぎる!