新宿御苑、代々木公園、日比谷公園・・東京都心部には意外に大規模な公園が多く、それが住み心地のうえで、大阪や名古屋との大きな違いだったりもするわけだが、上野公園だけにはほかのどんな大規模公園ともまったく異なる、複雑なイメージが絡み合っている。
正式名称を「上野恩賜公園」、地元民からは昔から「上野の山」と呼ばれてきた、総面積約53万㎡に及ぶこの公園には、日本最大級の博物館や美術館があり、動物園があり、音楽会館があり、芸術大学があり、徳川家の墓所である寛永寺をはじめとする歴史的建造物もあり、ボートが漕げる池も野球場もあり、江戸時代からこのかた、現実のドンパチを伴った唯一の内戦=戊辰戦争の舞台でもあり、多数の死傷者で血塗られた場所でもあり、そして都内最大級のホームレスが集まり暮らす場としても知られてきた。ほかの公園にはありえない光と影が、この場所では江戸の昔から交錯してきたのである。
東京文化会館や西洋美術館に向かう文化好きのひとたちと、動物園に急ぐ家族連れと、ブルーテント前の木立にロープをかけて洗濯物を干しているホームレスが、お互い我関せずふうに入り交じって、それが僕などにとっては上野公園ならではの魅力だったのだが(大阪の天王寺公園はすでにその魅力を失ってしまったし)・・久しぶりに上野公園を訪れてみると、そこはブルーテントのかわりに工事の囲いがそこかしこを覆う、またしても大改装の真っ最中なのだった。