今週土曜日(8月13日)から恵比寿の東京都写真美術館で、鬼海弘雄の写真展『東京ポートレイト』が始まる。
鬼海弘雄は浅草のオフィシャル・フォトグラファーだ。渡辺克己が新宿のオフィシャル・フォトグラファーであったように。
1945(昭和20)年、山形県寒河江市に生まれた鬼海弘雄は1973(昭和48)年から、もう38年間も浅草を撮ってきた。1941(昭和16)年、岩手県盛岡市に生まれた同じ東北人の渡辺克己が、新宿を題材にした作品を初めて発表したのも1973年。ふたりともモノクロームのポートレイトにこだわりつづけ、ふたりとも青年時代のインドへの旅が、写真家として自立するための契機となり……そして渡辺克己は2006(平成18)年に亡くなり、鬼海弘雄はまだ浅草を撮り続けている。
新宿と浅草という、東京のふたつの極を同時代に歩いた、東北生まれのふたりの写真家。でもふたりの共通点の多さと同じくらい、写真集から立ち現れるふたりの眼差しの違いもまた大きい。「風俗」にこだわりつつ、そこから透けてくる人間性をつかもうとした渡辺克己と、「風俗」を超えて存在する人間性をまっすぐにつかもうとする鬼海弘雄。それはもしかしたら、そのまま新宿と浅草という土地の違いでもあるのだろうか。
今回の「東京右半分」はいつもと少し趣向を変えて、鬼海弘雄が捉えてきた浅草の顔を紹介しながら、作家本人に写真という磁力、浅草という磁場を語ってもらうことにしよう。
終戦の年に山形県寒河江市に生まれた鬼海弘雄。蕎麦と温泉で名高い、のどかな農村地帯に育ち、高校卒業後は山形県職員になるが、1年で辞職。東京に出て、職工、運転手、マグロ漁船乗組員など転々と職を変えながら写真の道を目指し、1987(昭和62)年に初写真集『王たちの肖像??浅草寺境内』(矢立出版)を出版する——。
鬼海弘雄写真展『東京ポートレイト』
2011年8月13日(土)〜10月2日(日)
東京都写真美術館
(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)地下1階展示室
(カタログ、すごく充実してお買い得なので、売りきれないうちに要チェック!)