2011年8月11日木曜日

ROADSIDE FASHION最終回 シャッター商店街の男伊達

新潟県南魚沼郡五日市・・上越新幹線越後湯沢駅から車で約30分、駅前土産物屋街を過ぎ、空室だらけのリゾートマンションが林立するエリアを過ぎ、見渡すかぎりの田んぼのなかを走っていくと、そこはどこにでもありそうな田舎町の、どこにでもありそうなシャッター商店街だった。

「魚沼」といえばコシヒカリ。すぐお隣の五日町には「魚沼コシヒカリ発祥の地」の記念碑まで立っているものの、いくらお米がおいしいとて、田んぼまで見に来る観光客がいるはずもなく、ここもまた気だるさと侘びしさだけが漂うスモールタウンなのだ・・が、しかし! 車を降りてみると、シャッター商店街の一角に異様な看板が。店の前にデカデカと掲げられた「悪ガキ製作所」の文字。ご丁寧に真っ赤なパトランプまで取り付けられて、夜間はさらに異様な押し出しであるにちがいない。そしてガラス戸には、どこかで見たような金色の菱形を組み合わせたマーク・・ここって、シロウトさんのお店ですか?


魚沼郡今町に店を構える『BIRTH JAPAN』はブランド系でもなければ、ワル系メンズマガジンに出てくるオラオラ系でもない、「真の不良」に来てもらいたいファッションだけを追求する、あまりにユニークなメンズショップである。



そしてこの1月から『SENSE』誌上で始まったこの連載、なんと今回で突然の最終回です! 小沢仁志さんから始まって、イースタンユースや玉袋筋太郎さんもモデルになってくれて、作っていてすごく楽しかったこの企画。ほんとは1年間続くはずだったんですが、打ち切りの理由は・・・そう、広告主さまからのクレームなんですねぇ。またかよ!(笑) 

実名を挙げちゃうと、編集部が嫌がらせされそうなので言いませんが、複数の某有名ブランドの方々が、「広告出してやるけど、ああいうページはうちの商品にふさわしくないから」と、打ち切りを要求してきたそう。『SENSE』を出している出版社は、これ1誌しかやってない小さな会社なので、そりゃそんなこと言われたら、従わざるを得ないですよね。

しかしハイファッションのやつらっていうのは、自分たちがストリートからデザインを頂戴してるくせして、なんとかストリートとは一線を画したレベルに自分たちを置こうとする。イヤですねえ。南魚沼郡のはずれで、周囲の冷たい目を「批判を褒め言葉だと思ってますから」と意に介さず、信じるオトコ道をひた走る『BIRTH JAPAN』を見習ってほしいものです。

そういえば、ずいぶん前に『着倒れ方丈記』という連載を、いまはなき『流行通信』で連載していたときも(それはのちに『HAPPY VICTIMS』という写真集になりました)、ずいぶんたくさんのブランドから、抗議やお叱りをいただきました。

見てくれたひとはおわかりでしょう。それはそのブランドが好きで好きでたまらないひとたちが、コツコツ買い集めたコレクションを見せてもらおうという企画だったのですが、取り上げたブランドからは「そんなの聞いてない」だの「承認してない」だの、「自分たちのブランドイメージにそぐわない」だの、お客さんに対してものすごく失礼な言いぐさを、しょっちゅう編集部にぶつけてきたものです。あるときは書面で抗議が来たり、「訴えるから」とまで言われたこともありますが、そういうブランドの、ヨーロッパにいるデザイナーがたまたま来日して、たまたま記事を見たりすると、たいていはすごく気に入ってくれるわけです。そうすると、いきなり態度一変。「こんどオープンする東京の旗艦店の写真を撮っていただきたいと、○○○(デザイナーの名前)が申しております」なんて依頼が来たりして。あまりに見事な手のひら返しに笑っちゃったことを思い出しました。かっこいいことって、なんてかっこわるいんでしょう、ほんとに。

『ROADSIDE FASHION』は、いま完全に停滞しきってると思われるハイファッションの世界に対する、僕なりの刺激剤というか提案だと思っているので、いずれどこか別の場所で再開したいと考えています。あまり時間をおかないうちになんとか復活させますので、しばらくお待ちください!