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2011年10月26日水曜日

月刊カミオン 11月号・デコチャリ卒業生特集!

長らく愛読、しかしなかなか毎号は買えないでいたアートトラック愛好家雑誌『カミオン』。久しぶりに11月号を買ってみたら・・これがすごい! 「夢中でペダルをこいだ追憶の日々! デコチャリ卒業生・青春白書」という、涙なしには読めない特集になんです。

こんな感じに、現在の愛車と当時の愛車が並べられている。

付録DVDも必見! ちなみにバックにしたのは、
僕がいちばん好きな「子供によるデコトラ・イラスト投稿ページ」

僕がアートトラック(デコトラ)のデザイン・パワーに魅せられて、『Cruising KINGDOM:アートトラック・疾走の玉座』という写真集を作ったのが2000年のこと。それからもう10年以上が経ってしまったとは驚きですが、当時取材していてわかったのは、いまアート活動(デコトラを運転することを、業界用語ではこう言う)に励んでいるトラッカーの中には、中学高校生のころに「デコチャリ」にハマっていたひとがけっこう多いという事実。デコトラは乗り回したいけれど免許はなし、ということで、愛用のママチャリをせいいっぱい飾り立て、飾りすぎて重くなりすぎ、乗れなくなったチャリを押して歩く——アートにかけた、そんな熱い青春時代を送ってきたトラッカーが、たくさんいるんですねえ。

で、今月のカミオンは、いまトラッカーとして活躍するひとびとの、現在の愛車と、かつてのデコチャリを並べて紹介し、思い出話を取材したもの。これはもう、専門誌にしかできない、さすがの企画です。

デコチャリ時代の思い出を語りつつ、日光街道を爆走する「花道丸」と「神農丸」2台の名デコトラなどが収められたDVDも付録について、至れり尽くせり。考えてみれば彼らアート・トラッカーたちは、自転車のペダルをトラックのアクセルペダルに替えただけで、アートを背負ってペダルを踏み込むスピリットは、中坊時代から現在までまったく変わりがないわけです。アート活動にもいろいろありますが、これだけブレのない、熱い精神がみなぎってるのって、美術界よりトラック界のほうがすごいのかも。



2011年9月28日水曜日

PRINTS21 当世とりかえばや物語


今回の「とりかえばや」のおふたりは、奇しくも同じジャック・スパロウ。それもほとんどスパロウだけのコスプレにこだわりつづけているという、ストイックなレイヤーさんであります。ちなみにジャック・スパロウを知らないひとはいないと思うけど、ディズニー映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』4部作の主人公。演じるのはもちろん、ジョニー・デップ。あるインタビューで彼は「当時の海賊は、現代のロックスターのようなものだ」と語っていたようですが、今回登場してくれたおふたりもまた、ロックスターのような存在感です。

2011年9月21日水曜日

激渋ルチャリブレ・アートブック登場!


中野タコシェのオンラインショップで見つけて、思わず注文してしまったのがこの本。パリのオルタナティブ系出版社ANKAMA EDITIONSが出版した、メキシコのルチャリブレ・アートワーク・コレクションです。著者(というかコレクター)はジミー・パンテラという御仁。タコシェのサイトによれば——

ベルギーのルチャ・リブレ(メキシカンプロレス)おたく、ジミー・パンテラさん(本業はデザイナー)が、これまで収集してきた資料やメキシコ取材で撮った写真などを,自らデザインして作り上げたアートブック。最近では、興行やイベントを仕切ったり、ルチャ・リブレに関するアートの展示まで行なう程の熱の入れようで、ルチャ・リブレは人生や戦いが凝縮されているとまで言い切るジミーさんが、ルチャ・リブレへの思いを詰め込んだ一冊。画像ではわかりにくいですが、ブルー・デーモンのマスクと一体化した青い表紙のタイトルまわりは金の箔押しで、装丁も含めて美しい本です。


祝祭的な色合いのマスク、メンコみたいなレスラーカード(印刷の版ずれが味わい深い!)、決め技の図解、試合のチケットやポスター、記録写真、雑誌や新聞の記事、ルチャ・リブレ史上最大のヒーロー・サント出演の映画ポスターやコミック&もうひとりのスター・ブルー・デーモンの映画や実写コミック、など貴重な図版が惜しみなく使われています。またフィギュアやブロマイド、現地での試合の模様、ポスターなどの印刷所やその独特のタイポグラフィ、などの現地取材資料も豊富。
日本で人気のミルマスカラスの姿もあり、ルチャ・リブレのスターたちが一堂に会してます。

ということで、これはルチャ・ファンのみならず、ファンクなグラフィック好きなら、押さえざるをえないアイテムでしょう。出版社のサイトでは、中味も見られるようになってます。





実は僕も2000年(もう11年前か!)に『Lucha MASCARADA―メキシカン・プロレスと仮面の肖像 』というデザイン・ブックを出したんですが、アメリカのショー・プロレスとも、日本の人生劇場型プロレスともちがう、メキシコ独特のルチャには、なんともいえない美的感覚があります。できれば両方併せて、お読みください!


 ちなみにこちらは2005年、展覧会で訪れたメキシコシティで、ひょんなことから撮影させてもらえることになったルチャリブレ界のスーパースター、エルサント(2代目)。いままで使用したことのない、未発表写真をオマケにどうぞ。おしゃれデザイナーズ・ホテルで撮影したんですが、もう従業員から道行く子供たちまで、大騒ぎ! 変わることのないメキシコのルチャ人気を実感しました。






2011年9月15日木曜日

本郷館の最後

ツイッターでも少しだけ書きましたが、『TOKYO STYLE』でも取材した文京区本郷の木造3階建てアパート「本郷館」が、ついに壊されてしまいました。1905(明治38)年に建造された「高等下宿」。今年で築106年! 林芙美子から一説によれば蒋介石まで、数々の著名人が暮らしたことでも知られる、貴重な文化遺産ですが、熱心な保存運動にもかかわらず、この8月になって突然の解体工事開始。新聞などの報道を読まれた方もいらっしゃるでしょうが、すでに建物は跡形もありません。

関東大震災を生き延び、太平洋戦争の空襲を生き延び、3月11日の地震にもびくともしなかった本郷館ですが、重機にかかってはひとたまりもなく、あっというまに解体完了です。このあとは、いったいなにが建つんでしょう・・。


先週、現地を訪れてみたら、朝から工事現場を見守っているひとが何人もいました。そのひとりに話を聞いてみたら、「30年間も住んでいたので、居ても立ってもいられず、毎日見に来てるんです!」とのこと。その気持ち、わかりますねえ。

いっぽう、いくらなんでも百年を越す建築なので、「次の大地震が起こったら・・」と心配する近隣住民がいることも確か。近くの喫茶店で会った老婦人も、「あれは周囲のお宅は怖いですよ、残念だけど、解体されてよかった」と言ってました。ただ壊してしまうのではなくて、明治村でもどこでもいいから、移築できたらいちばんよかったのでしょうが。そういえば、同じく大好きなひとが多かった広尾の羽澤ガーデンも、間もなく解体予定。どう知性や洗練を装っても、こころは貧しい金持ちばっかりですね、ほんとに(『羽澤ガーデンを守る会』参照 http://sky.ap.teacup.com/hanezawa/)。

在りし日の本郷館、1991〜2年当時

いまから現地に足を運んでも、もはや工事現場しか見ることはできませんが、本郷館の保存に関してはふたつの充実したウェブサイトがあります。

本郷館を考える会 オフィシャルサイト http://hongoukan.blogspot.com/
本郷館プロジェクト http://www.hongo-kan.com/
(こちらのサイトの「資料・販売」ページにある『本郷館調査報告書 別刷図版』には、図面や室内写真がたくさん載っています。PDFをダウンロードできるので、興味ある方は要チェック)

また、高橋幹夫さんという研究者が『本郷館の半世紀』、『本郷、下宿屋ものがたり』『下宿屋本郷館の生活実態』という3冊の手作り本を出されていて、こちらはAMAZONから購入可能です。いずれも700円とお買い得!



いまから20年ほども前、何人かの住人と知りあって撮影に通った本郷館は、東大生からおばあさんまで多種多様な人たちが暮らす、すばらしくぼろっちくて、すばらしく元気な生活共同体でした。文庫版になった『TOKYO STYLE』でも、その様子はご覧いただけますが、なにせ判型が小さいので、少しだけここに写真を載せておきますね(倒産した京都書院から出た大判の写真集だと、じっくり鑑賞可能。古書店で安く買えます・・涙)。しかし本郷館だけの写真集、作りたいなあ・・。





2011年6月16日木曜日

こういうのって、ありですか!?

もう、書店で見かけてびっくりしたひとも、少しはいらっしゃるかも。先月末に出たばっかりの『可笑しなホテル 世界のとっておきホテル24軒』という一冊。


これ・・・『ROADSIDE USA』そのまますぎなんですけど・・涙。


あんまりびっくりしたので、出版元の二見書房に経緯を聞いたら、なんと以前に名刺交換したことのある編集者さんが担当だったんですが、「言われてびっくりしました、都築さんの本のこと、ぜんぜん知らなかったんですよ!」とのこと。デザイナーさんも、僕の本のことなんか知らなかったんでしょうねえ。なので不幸な偶然・・というわけです。

著者のベッティナ・コワルウスキーというひとは、ドイツのトラベル・ジャーナリストで、本書のもととなったドイツ版が出たのが2008年、英語版が2009年のこと。本書はそこから内容をアップデートした日本語版ということになるようです。僕も英語版で見てましたが、内容はなかなかの労作。よくこんなとこまで、というフットワークは賞賛に値します。しかし! 原著のカバー・デザインは、ぜんぜんちがうじゃありませんか。

2008年発売のドイツ版

2009年発売の英語版

で、偶然ならしょうがないけど、ここまでそっくりさんじゃしょうがないので(こちらは半年以上前に出してるんだし)、重版になったらカバーデザイン、変えてもらえますか? と聞いたら、「わたしたちもこれがベストだと思ってるので、変えるつもりありません」ですと。しかも「うちのほうは犬が増えてますし」! こちらの出版元のアスペクトも「まあ、しょうがないでしょう、別に問題にするつもりありません」・・。ナメられたもんですねぇ、こんだけ本作っといて。

まあ、あっちの本は旅行ガイドだし、定価1995円だし、こっちは豪華写真集だし、定価12915円だし・・売れ行きの勝敗は明らかですよね。いくつになっても、こういうことがあるとヘコむんだけど・・でも、いいです。こっちは爆音でヒップホップ聴きながら、次の本つくるのに全力で取り組むだけです。いつか見返せる日が来ることを信じて。

というわけで、こんなにイヤなことがあったときは、この動画でこころを洗います。


踊る続けるやつが、勝つんだよ!


2011年6月9日木曜日

堀内誠一  旅と絵本とデザインと:最終展覧会に急げ!

我が編集者人生の偉大な師である堀内誠一さんの展覧会が、去年から日本各地を巡回していますが、その最終展がただいま、うらわ美術館にて開催中。

グラフィックデザイナーであり、エディトリアルデザイナーであり、絵本作家でもあり・・その多彩な活動は、しかし多彩であるがゆえに、業界における評価のメインストリームからは半歩、外れたところにあったのかもしれません。でも、見ていただければわかるはず。「本」というものをつくるすべての喜びと愛とが、ここには詰まっています。



各地の巡回展のうちでも、今回の浦和における展覧会は、かなりスペースも広く、見やすい会場構成だそうなので、未見の方はぜひぜひ、ご覧ください。今月26日で終わってしまいます。

本づくりにかかわるあらゆるひとは、ぜったい必見の展覧会です!


2010年12月1日水曜日

オレサマ商店建築:ホストクラブ愛本店

連載12回目にして最終回という短命に終わることになった(涙)、この連載。最終回にふさわしく、僕が知るかぎり日本最強のゴージャス・インテリア商業空間、歌舞伎町のホストクラブ愛本店を撮影することができました。行ったことあるひと、いますか。いまホストクラブ愛では、初回限定スペシャルコース、2時間5000円という超低価格サービス中。ぜったい安心の店なので、未体験の女性陣はぜひいちど禁断のドアを開けてみてください!


若き日のやんちゃぶりを都合よくすっかり忘れた都知事が旗を振る浄化作戦のおかげで、いまやずいぶんエネルギーを削がれた感のある歌舞伎町。酔客にホステス、ホストにキャッチに深夜ブティックに屋台でごったがえした裏通りも、いまや空き店舗の表示が目立って寂しいかぎりだ。

そんななかでもいまだに電飾ギラギラ、そこだけエレクトリック・サーカスのごとく激しい夜のオーラを放っているのが、愛田武社長ひきいる愛田観光グループ。現存最古の老舗ホストクラブ『愛』本店を中心に『ニュー愛』、パブ『カサノバ』、おなべBAR『マリリン』など数店舗を歌舞伎町の一角に集中経営する愛田社長は、この町でもっとも知られた顔である。


本誌の読者で『愛』の常連だという方は多くないだろうが、電飾にオブジェに鏡にホストの顔写真が渾然一体となった、あのめくるめくファサードを見たことのないひとは少ないはず。歌舞伎町にかぎらず、夜のお店のほとんどがシックで抑制の効いたデザインを指向しているなかで、愛グループだけはひときわ目立つ存在感を誇示している。

キラキラのファサードを抜けて、キラキラの階段を降りて店内に足を踏み入れると、そこはさらにキラキラの海。電気仕掛けの極楽浄土だ。そしてこのインテリアをすべて、愛田社長みずから手がけているといったら、みなさんは信じるだろうか。ご本人に、お話を伺ってみた!


浅草アミューズ・ミュージアムで青森の「タッツケ」特別展開催中

2008年に出版した『BOROつぎ、はぎ、いかす。青森のぼろ布文化』(小出由紀子さんとの共著)のコレクションを実際に見て、触って体感できるユニークなミュージアムである、浅草のアミューズ・ミュージアム。芸能プロダクションの運営ということで、インテレクチュアルな芸術ファンには色眼鏡で見られがちだけど、あれだけの収集品を見て触れるというだけで、お堅い公立美術館よりはるかに刺激的だと思います。

そのアミューズ・ミュージアムで、常設のBORO展と並んで、11月11日から始まっている開館1周年特別展が『LOVE! HANDMADE 手しごと刺繍展』。なんだかフェミニンなタイトルですが、中味はなかなかどうして! 青森県南部地方で明治大正期、貧しい農家の女性たちが身につけたタッツケ(仕事着である股引)の逸品を並べた、非常に珍しいコレクションです。


タッツケとは、相撲の呼び出しなどが着用している膝から下が細く仕立てられた袴「裁着(たちつけ)」が転じたもので、青森県南部地方では女性の仕事着である股引(ももひき)の呼称だが、女性の下肢にこれほどの刺繍が施された衣類はこの南部地方に固有のもので世界的にも稀なものだ。 

南部地方は青森県を二分する太平洋側の地域である。雪が少なく緑豊かだが、土壌が稲作に向かない畑作地帯で東北の中でも特に貧しい地域だった。木綿は高級品だったので衣類はもっぱら麻布が中心。貧しさゆえ衣類を染める藍さえも多量に使うことができず、淡い浅葱色の染めが主流だった。

また、この地域は北東風(ヤマセ)が強く人々を苦しめた。寒冷で過酷な風土は衣服にも表れ、上衣はもちろん下衣にも保温と補強のために刺し子がほどこされた。下衣は上衣よりも損傷が激しいため、タッツケは特に丁寧に手刺繍された。過酷な環境が固有の風土的美意識を育み、浅葱色の麻布に貴重品だった木綿糸を縫いつける刺し子の技の粋が集められた。それが「南部菱刺しタッツケ」である。 

寒村の農民の仕事着というと、現代の我々はついつい「ボロボロの作業着」だと思い込んでしまうが、当時の農村での仕事着は単なる作業着ではなく人が集まる場所に着ていく衣類でもあるので、現代でいうOLのオフィスウェアやビジネススーツに近い感覚の衣類だった。特に男性同様に畑仕事などの労働を行っていた若い女性にとって仕事着は、パーティーウェア(晴れ着)ではないものの決して単なるワークウェアではなく、美しくありたいと精一杯の工夫を凝らした装いでもあった。 

もちろん機能的なデザインとなっており、膝上は畑仕事の時に動きやすいようゆったりと、また膝下は害虫に刺されないため体にフィットするよう極端に狭くなっている。

このジョッパーズのようなシルエットの裏地の傷んだ部分は、つぎあてされ補強され新たな合わせの妙をみせている。全面に施された刺し子は、娘たちの技を競うものであり、美しくありたいと願う心の発露であった。 

そんなに昔のことではない。かつては日本でも自分や自分の家族の衣類を一家の女性たちが自ら作ることは日常的なことだった。豊かではない暮らしの中、わずかな端切れ布や短い糸もとても大切にし、手に入るものを最大限工夫して、美しくありたい、健康でありたい、と願った想いが、これら美しい仕事着に残されている。これら一般女性の技術と想いをご覧ください。





いまや、ほとんど出口のないような閉塞感におおわれたハイ・ファッション界に較べて、こうした日本でもっとも貧しかった地域で百年以上前に生まれた衣装が、どれほど自由に、しかもシャープに映ることか。

展覧会は4月3日まで開催中。浅草寺のすぐ脇とロケーションも最高なので、ファッションに興味あるひとも、デザインに興味あるひとも、浅草に興味あるひともぜひ足を運ぶべし。しかしこういう貴重な展覧会を、こんな小さな民間のミュージアムにやられてしまうことを、おしゃれなデザイン・センターや公立の大ミュージアムさんたちは、もっと恥ずべきじゃないんでしょうか。

2010年11月24日水曜日

ART IT web 失われたラジカセを求めて


ウェブマガジンとして甦った現代美術誌『ART IT』で、6月からひっそり連載が始まっている『ニッポン国デザイン村』。今回は1960年代末に日本が生んだ偉大なプロダクト「ラジカセ」について考察しています。


1960年代末に日本で生まれた偉大な発明であるラジカセ。ちなみに「ラジカセ」という名称を最初に使ったのは、カーステレオやカーナビ、レーザーディスクも世界に先駆けて商品化したパイオニアだと言われている。

ラジオが聴けて、カセットがかけられて、録音もできて、AC電源でも乾電池でも駆動するラジカセは、音楽が室内に縛りつけられることから一歩先に進んだ、画期的な技術だった。もしかしたらウォークマンよりもノートパソコンよりも、ましてやiPodなんかよりも、はるかに。

1980年代のアメリカにおいて、創生期のヒップホップ・シーンを支える存在として「ブームボックス」、「ゲットー・ブラスター」などと呼ばれ愛されたのを、覚えている方もいらっしゃるだろう。音楽をストリートに持ち出すこと。自分だけのサウンドシステムを持ち歩けること。ヒップホップ・カルチャーの誕生は、ラジカセなくしてはありえなかったかもしれない。

2010年10月13日水曜日

HELL 地獄の歩き方 タイランド編 発売!


これまで数年間にわたって、ひっそり取材を続けてきた、タイの田舎の地獄庭園。ついに写真集、というか飛びきりエグいガイドブックになりました! 『HELL  地獄の歩き方・タイランド編』、今週末発売ですが、すでに店頭に並んでいる書店もあるかもしれません。


地獄に行きたい人間は、あまりいない。
なるべくイヤなこと、体験したくないことを何百年、何千年にわたって、何億人もが考え抜いた、究極のネガティブ・イメージ。それが地獄というものであるはずだ。
それなのに世の中には、死んでからしか行けないはずの地獄を、いますぐ味見してもらおうと、手間ヒマかけて再現してしまうひとたちがいる。
プロのアーティストではなく、そのへんのコンクリート職人や、お寺の信者たちが、ちからを合わせて造りあげた苦しみのヴィジョン。シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。現世の片隅にひっそり毒花を咲かせる、そんな地獄庭園に魅せられて、長いこと撮影行を続けてきた。
これをアートと呼べるのかどうか、僕にはわからない。けれど世の中に「アート」という名前で流通している商品よりも、はるかにリアルな思いのカタマリがここにある。  
(序文より)

その、あまりにグロテスク、そして敬虔な仏教徒の国にもかかわらず、往々にしてエロティックな立体作品の数々は、とてもここでは紹介しきれないので、専用の紹介サイトを立ち上げました。とりあえず、ご一読ください!




一時は毎月通うほどハマっていたタイの田舎めぐりが、ようやくかたちになったかと思うと感無量ですが、「またバンコク行くの?」と疑惑の目で見ていた友人諸君も、これでようやく納得してくれるかと・・・。刊行を記念して、今月29日にはトークショーも開きます。今週日曜が受け付け開始なので、お早めのご予約を。

『HELL 地獄の歩き方<タイランド編>』(洋泉社)刊行記念 
「都築響一ワイドショー」VOL・6
開催日時 2010月10月29日(金)19:00〜
会場:青山ブックセンター六本木店
受付開始日: 2010年10月17日(日)10:00~

タイと言えば、おいしいご飯だのマッサージだの、お買い物だのと浮かれるのが当然ですが、たまにはバンコクにも、ビーチリゾートにも背を向けて、こんな「地獄めぐり」の旅はいかがでしょうか。街のスタンドでは死体雑誌がふつうに売られ(最近はあまり見ませんが)、夜の繁華街は世界最強の売春&ドラッグ無法地帯と化す、「微笑みの国」のダークサイドを支えるメンタリティが、ちょっとは理解できるようになるかも。


駒込ホテル・アルパ、突然の閉店!

オールドスクールのラブホテル・ファンにはおなじみ、駒込駅前のホテル・アルパが10月12日で営業終了、閉店というニュースが飛び込んできました。『ラブホテル Satellite of LOVE』でも取材させてもらい、外国のメディアもずいぶん連れていって大好評だった、アルパは真にオリジナルなジャパニーズ・デザインの粋ともいうべき快楽空間でありました。

施設の老巧化、売り上げの減少など、閉店の原因は複合的なものでしょうが、この4月に従業員仮眠室に強盗が押し入り、寝ていた従業員に重傷を負わせたうえに売上金を奪ったという強盗致傷事件があったことも、影響しているようです。

ファッション・ホテルとかブティック・ホテルとか、オブラートに包まれた名前と、シティホテルと大差ない“お洒落なインテリア”の、どうでもいいラブホばかりがはびこるなか、またひとつ貴重なデザインの名店が消えてしまいました。だれにも気に留められず、惜しまれもしないままに。

ただのオフィスビルや公会堂とかは保存運動に大騒ぎする建築史家たちも、こういう本来の「文化遺産」は完全無視。僕らにできることは、アルパのようなクラシックなホテルを、せめて営業中のうちに一軒でも多く訪れることしかありません。次に突然、消えてなくなってしまう名店はどこなのでしょう。川崎・迎賓館、西蒲田・王城、大阪京橋・ホテル富貴・・・きょうはまだ営業中のクラシックなラブホテルを、ひとりでも多くのみなさんが体感できますように。

ホテル・アルパはいまのところ、まだウェブサイトは閉じられていないようです。
 
いまから10年以上前に撮影させてもらった、ホテル・アルパの絶品インテリア・デザインはこのとおり!


ね、行っときゃよかったでしょ!


2010年10月6日水曜日

週刊朝日:京都府庁のマネキンさま

こないだのブログでちょっとだけお伝えした、京都府庁広報課に導入された「ペルソナ」という名のマネキンたち。どうしてもこの目で見てみたかったので、週刊朝日で取材しました。今週号に、その記事が載ってます(うしろのほうのグラビアページ)。


ここは京都府庁広報課。パソコンに集中するスタッフを見おろすように、じっと動かない女性の上半身。彼女(マネキンのほう)の名前は人見知子(ひとみ・しりこ)。亀岡市に住む32歳の主婦。性格は協調性があるが人見知り。趣味はガーデニング、オークション・・。なんだか不条理演劇の舞台みたいだが、これ、実は本気(マジ)。よりよい広報活動のための、新しい取り組みだ。




この7月に最初の3体が導入され、翌8月にお友達が2体増えて、いまでは計5体(人)が広報課のデスクに勢揃い。京都府庁のウェブサイトはペルソナ導入以来、すでにアクセス数もぐっとアップしたそう。しかし毎日、朝から晩までマネキンに見おろされながら仕事するのって、どうなんでしょう。「慣れるもんですよ」といいながら、ちょちょっとシャツのシワを直したりする手つきには、そこはかとない愛情すら感じられましたが。
(本文より抜粋)