2011年11月2日水曜日

タイの洪水について考えたこと

先日、FacebookとTwitterに、タイの洪水に関する日本メディアの報道について考えたことを少し書いたら、同意も反論も含めて、意外なほど多くの反響をもらいました。なので、今回はその補足を少しだけ。

最初に、そのとき書いたメッセージを転載します:

タイの洪水報道、なぜ日本企業のことばっかり?

 連日テレビでも新聞でも報道されてるタイの洪水ですが、9割方は「おかげで日本企業の工場にも甚大な被害・・」って、その前に死んだり家を失ったりしてるタイ人がたくさんいるんじゃないの?と突っ込みたくなりませんか。 
 バンコクからのテレビ中継でも、「王宮にも水が!」みたいに声を張り上げてる特派員のそばで、膝まで水に浸かったおばさんが、平気で屋台営業してたり、オヤジがタイヤの浮き輪でぷかぷかしたり、発泡スチロールの板に子供乗っけてイカダ遊びしたり・・悲惨な状況ではあるけど、ちゃんと水と折り合って生きてるタイ人がたくさんいることを、もっと見せてほしいと思います。 
 バンコクの友人から、こんなメールが届きました: 
 おっしゃる通り、日本の報道は同じようなものだらけですね。 ナワナコンというアユタヤ下に位置する地域が浸水したときの、日本のニュース映像を見たのですが、その中でその近くの工場に勤務している年配の日本人が現地インタビューされていました。
 「なんとしても耐えてもらわなければ困る。なんてったって何億っていう設備だからね」と言ってるそばで、いくら設備代がかかってようが関係ないタイ人たちが汗水垂らして、必死に土のうを積み上げていました。
 その日本人はシャツにネクタイという格好だったので、土のう積みもしないで、さっきのことを言っているんだなあと、見てるこっちはなんだか空しい気持ちになりました。
 アユタヤ、ナワナコンという工場地帯は、ジェトロに紹介され、日本の会社が右へ習え的なもので工場を作り、何十万人というタイ人工員を雇ってきた場所だと、勝手に僕は解釈しています。日本人が勝手に来て、勝手に浸水して騒いでいるような。
 そもそもタイの人々は、水とともに生きてきた人たちだと思います。運河を使った交通機関もいまだに残っているわけですし。
 彼らには都築さんの言うようにゆるさもあり、浸水したところに網を放り、魚をとっているというたくましさもあります。もちろん本当に困っている人々や亡くなっている人々もいますが、外野がガヤガヤ騒ぐ問題なのかなあ、とも思ったりしています。
 そして僕は、連日の日本のテレビ局の特派員、駐在記者の受け売り的な取材や、日本人居住地区での在タイ日本人への不安を伝えるだけのぬるい仕事ぶりにはビックリしています。

書いてるうちにバンコクに行きたくてたまらなくなってしまいましたが、ご承知のとおりいまもバンコクを含むタイの水害は深刻な状況です。水が引いたあとも、というかそのあとがむしろ大変で、上水が汚染されたり、工場から漏れた薬品や油での汚染もあり、電線からの漏電、感電の危険もあります。僕個人としては、バンコクにいる友人たちの安否はもちろん、前に写真集にしたタイの田舎のお寺の地獄庭園も、どうなってるか心配でたまりません。
でも、そういうことすべてを知った上で、日本ではなく現地や欧米のメディアによる報道や、現地のひとびとのブログや画像サイトなどへの投稿を見ていると、「ああ、タイ人はこんなふうに水と折り合って生きていけるんだなあ」と、そのたくましさ、おおらかさ、ポジティブさに感動してしまいます。
前に足立区竹ノ塚を「東京右半分」で取材したとき、竹ノ塚で生まれ育った友人が、「台風来ると床下浸水しちゃって、下水とかなかったからさ。家の前がみんな川状態になって。雷魚の一本釣りとか、鯉とかも釣れる(笑)。亀とか、蛇も泳いできて。雨になるとイカダで学校行ってたし!」なんて話を笑いながらしてくれましたが(ここでまだ読めます http://p.tl/7pyR)、ほんの少し前までは、日本にもそういうメンタリティはちゃんと残ってたんですよね。
というわけで、これからお見せするのは通信社や、タイのひとたちがFacebookなどに投稿した「洪水だけど楽しくやってる!」写真集。商用利用じゃないので、引用お許しを。たとえば東京の隅田川とかがあふれたとして、僕たちはこんなふうに毎日を送れるでしょうか。





 http://p.tl/Jd0q










そしてこんなオヤジに、僕もなりたい!!!