2007年に木村伊兵衛賞を受賞したときは、「こんな素人くさい写真が」と、選考委員だった僕にも批判が聞こえてきたりしましたが、その後の活躍はみなさんご存じのとおり。たった2、3年での、あまりの人気急上昇ぶりに、いまだに疑問符付きでしか彼女を見られないひともいるかと思います。
でも、そういうひとも、今度の写真集を見てくれたら、一瞬を切り取る彼女の眼がいかにシャープか、思い知らされるでしょう。
アンリ・カルチエ・ブレッソンが「決定的瞬間」を唱えたのは、いまからもう60年も前でした。その写真集、英語だと「The Decisive Moment」ですが、フランス語の原題は「Image à la sauvette」。これは「逃げ去る映像」といった意味です。思えば梅佳代こそ、現代の「逃げ去る映像=決定的瞬間」を捉える最高のキャッチャーなのかもしれません。
作品集の刊行にあわせて、8月7日からは表参道ヒルズで展覧会も催されるそうです。
梅佳代写真展「ウメップ」 シャッターチャンス祭り in うめかよひるず
Umep : Shutter Chance Festival in UMEKAYO HILLS
http://www.omotesandohills.com/event/index.php?PHPSESSID=3a42bc037e8ec4cd33ae9784b4772499#e195
約1700点の作品を展示する、東京では初めての大規模個展となる模様で、いろいろ関連グッズも販売されるとか。これは行かないと・・・。
しかし梅佳代が2002年に大阪の写真学校から上京して、アルバイトしながら初めて開いた展覧会を思い出したのですが、恵比寿のビルの地下にあった貸し会場を訪れてみると、壁にぐちゃぐちゃプリントが貼ってあり、奥の一角にはスライドショーのエリアがありました。スライドショーといっても、すんごく安い、カルーセルすらないスライド映写機の横に梅佳代本人が座っていて、手に持ったリモコンを操作してカッチャン、カッチャン、スライドを送っているではありませんか。
びっくりして「なにしてんの?」と聞いてみたら、映写機が安っぽくてオートにできないので、一日中そこに座って待ち、お客さんが来るたびに「10秒おきぐらいにスライド送って見せてるんです」と、平然と説明してくれました。そのときでしょうか、「こいつは将来、大物になる!」と実感したのは(笑)。その「将来」がたった2、3年とは、さすがに僕にも予想できませんでしたが。
そのころから、そしていまでも彼女は愛用の安っぽい一眼レフを、どこに行くにも、どんなときもぜったいからだから離しませんが、それは初めてのエレキギターとベッドの中でまで添い寝していたジミ・ヘンドリックスを思い起こさせます。
ところで先週まで開いていた広島の展覧会で、梅佳代が大阪の写真学校時代に住んでいた学生寮の写真を展示していたの、気づかれましたか?