2010年4月22日木曜日

東京右半分:浅草は演歌のシブヤなのか

東京の演歌・歌謡曲シーンを支えるレコード屋さんめぐり、2週目の今回は、浅草のユニークな老舗ショップを2軒、紹介しよう。

浅草・ヨーロー堂

雷門前を通りすぎてすぐ、観光客と、観光客狙いの人力車引きでごったがえす雷門通りに店を構える『ヨーロー堂』。いまの店主・松永好司さんで4代目、創業が大正元年という、とびきりの老舗だ。街のレコード屋さんには珍しく、超充実の公式ウェブサイトを見てみると、こんな「店主のプロフィール」が載っている――

1968年9月15日生まれ。浅草ヨーロー堂三代目の父と、横浜は伊勢崎町のレコード店美音堂の四女との間に生まれる。しかも両祖父とも全国レコード店組合長ということもあり、すでに将来は逃げ道のない選択肢を迫られる。浅草寺幼稚園、浅草小学校と地元で過ごす。お花祭りの時こっそり舐めた甘茶が甘くなかったのが一番の思い出。中高は新宿フジテレビ横の成城中高校。「夕焼けにゃんにゃん」全盛期のため電車内にて数々のおニャンコたちと遭遇。都営新宿線の満員電車で(故意に)新田ちゃんやジョウノウチの隣になったのが一番の思い出。先日、城之内早苗さんと(あくまで私でなく友人の話として)その話をさせて頂きました。「そういえばそういう高校生多かったわね!」の一人です。美味しいものが食べたい一心で明治大学農学部へ進学。ゼミ合宿の時、まだ品種改良中の農林332号という米が妙に美味かったのが一番の思い出。現在のミルキークイーンの原型のようです。在学中は勉強はまったくせず劇団木馬座で役者してました。当時の私を知る皆様、色々とご迷惑をおかけしました(笑)その後、大手漁業会社を経て、ヨーロー堂に半ば強制的に入社。店長として現在に至る。

店長さんの楽しいキャラがうかがえる自作プロフィールそのままに、ヨーロー堂は浅草にどっしり根を張りながら、街のレコード屋さん範疇をずいぶんはみ出した、バラエティ豊かなセレクションと、2階に設けた専用イベントスペースがウリ。ここの品揃えからは、いままで僕も個人的にずいぶん教えてもらってます。

浅草・イサミ堂

浅草の中心部から少し離れた、言問橋近くに小さな店を構えるイサミ堂。一見、ほんとにふつうの街のレコード屋さん。入口にも浜崎あゆみのポスターとか貼ってあって、どうってことない感じなのだが、実は! このイサミ堂こそ全国各地の浪曲師や落語家、愛好家、その他もろもろの昔の録音マニアのあいだでは知らぬもののない、音源聖地なのであります。

店内のおもて半分に並ぶ、ふつうのCDやカセット(それでも浪曲や落語の充実ぶりはただものではないが)が並ぶエリアを抜けて、店の奥に踏み込むと、そこは天井近くまで設えられた棚に、整然と収められたSP、LP音源のコレクション・ルーム。その真ん中に陣取って「なんか聴きたいものあったら、言ってくださいね、なんでもかけるから」と柔和な笑顔を向けてくれるのが、店主の梅若裕司さんだ。その足元にあるボックスセットは・・「あ、これね、徳川夢声の『宮本武蔵』、LP100枚セット」なんて、こともなげに教えてくれる。なんなんですか、この店!