2010年4月7日水曜日

気になる展覧会3つほど

忙しさにかまけてるうちに、気がつけば会期終了、作家にあわせる顔なし・・・というのが、画廊展覧会の常。今週気になる、小規模だけど興味深い展覧会を3つ、紹介します。

まずは京都在住の画家・勝国彰(かつ・くにあき)。いまの現代美術のトレンドとはまったく無縁の、究極の細密描写によって、幽玄・妖艶としか言いようのない、独特な世界観を小さなキャンバスに表現しつづけている、知る人ぞ知る画家です。現代美術評論家にはぜったい取り上げられませんが、幻想絵画系ではすごく人気の高いひと。

かつて京都に住んでいたころ、勝さんのアトリエ兼住居を訪ねて撮影させてもらったことがありますが、そのとき彼は駐車場の片隅に建てられた小屋に住んで、絵に没頭してました。小屋には風呂どころか、便所も水道もなし。風呂は銭湯、便所は駐車場内の別棟の便所、茶が飲みたくなったら便所までヤカンを持って水をくみに行き、小屋のコンロで湯を沸かすという、ストイックきわまる生活でした。

いま、勝さんがどんな暮らしをしているのかは知りませんが、そのストイシズムは当時から現在まで、いささかも衰えず、むしろ純度を増しているようです。頭でっかちの現代美術展に飽きたら、こういう絵でこころを洗ってみることをおすすめします。

勝 国彰(Kuniaki KATSU)の描く絵は、妖艶な雰囲気が立ち込めています。人間の業、情念、嫉妬心、憎悪、執着といった感情を、その巧みな画力で鮮烈に放つかのように――――
 勝の作品は、緻密な描写であるイメージを私たちの目に見させながら、それだけで終わることなく、画面から匂いでるような不思議な力で私たちを包みこみます。その力とは、一体なんなのでしょうか。
 「あなたの内にある風景やその中に棲む誰かと、どこか似ていたとしたら、僕は少しうれしく思えてくるのです。」と勝は語ります。
 もしかするとその力とは、誰もが持つ人間の根源的な闇、血の中にある美しき情念を表現し、彼の血の中に流れている日本人としてのアイデンティティに導かれているのかもしれません。
 仏教美術など、日本古来の伝統文化特有の美が息づく勝の表現世界は、観るものを幽玄の彼方へといざないゆくのです。
 (2007年、Bunkamura Galleryで行われた個展の案内より)

勝 国彰 展 
4月12日(月) - 4月24日(土) 12:00-19:00 [18日(日)休 
銀座ぎゃらりぃ朋

ふたつめは、これまた独特な細密世界を展開しつづけている齋藤芽生(さいとう・めお)さん。六本木のギャラリー・アートアンリミテッドにて、4月19日から1ヶ月間。「VOCA展で佳作賞/大原美術館賞を受賞した新作「密愛村」の続編ほか、晒野団地入居案内「愛」のシリーズなど、濃密な齋藤芽生ワールドを展開します」ということです。このひとの脳内には、いったいどんなビジョンが展開しているんだろうと想像すると、ちょっと空恐ろしくなる、独特な世界観がみっちり、画面に塗り込まれています。

齋藤 芽生 『密愛村』
2010.04.19 [mon] - 05.22 [sat] 13:00 - 19:00
休廊日:日・祝・火  ※5月2日から11日まで連休
六本木ギャラリー・アートアンリミテッド

そして最後はあの秋山祐徳太子と美濃瓢吾さんによる二人展『ブリキ男と招き男』。これは濃そうです・・・、場所は東京じゃなくて、福岡県なんですが。

秋山祐徳太子は1935年生まれですから、今年75歳! しかしめちゃくちゃお元気で、バリバリ現役。いまも例のブリキ彫刻を制作したり、各所に突然現れては怪気炎を上げる毎日です。これくらい元気な「生きているポップアート世代」って、ほかにいないかもしれないですね。

その秋山さんの舎弟みたいに、よくいっしょに活動している美濃瓢吾さん。何年間も浅草木馬館に住みついて、興行を手伝いながら自分の絵を描いていた日々をつづった『浅草木馬館日記』を読んだことあるひともいるでしょう。美濃さんが描くのは福助や招き猫や、大入看板ばっかりなのですが、いつも同じモチーフでありながら、不思議に一枚ずつの味が滲み出てきます。

会場となる「トコポラ」というギャラリーは、川俣正の田川コールマイン・プロジェクトでも知られる、福岡県田川市に本館、博多中央部の赤坂にアネックスを置く、珍しいスタイル。今回の二人展は2館同時に、同時期開催だそうです。

秋山祐徳太子 美濃瓢吾 二人展 『ブリキ男と招き男』
2010年4月9日(金)〜6月27日(日)
TOKOPOLA modern art gallery
福岡県田川市大字伊田5000 TEL/FAX:0947-45-1152
TOKOPOLA ANNEXE けやき通り 
福岡市中央区赤坂3丁目6-42 2F 
TEL/FAX:092-762-1510