2010年6月23日水曜日

東京右半分:初音小路に吹き渡る風は、古き良き浅草の香りがする

いま再開発の波が押し寄せかけている浅草で、昔ながらの空気感をかろうじて保っている、たぶん唯一の場所。それが場外馬券場ウインズと花やしきに挟まれた一角にある『初音小路』である。


ゴールデンウィークごろには見事な花をつける藤棚が、十文字の通路にすっぽりかぶさる初音小路。たった数十メートルのブロックに、2階建ての飲食店が軒を連ねている。平日はひっそりと静まりかえる小路。週末は朝からどの店もシャッターを開け、外にテーブルとパイプ椅子を出して、馬券を買いに来る客にビールやホッピーや、おでんや焼き鳥を出す。慣れたお客さんたちは店頭に置かれたテレビの競馬中継を見ながら、グラスを傾けつつ競馬新聞をにらみ、ぐっと気合いをこめて立ち上がると、飲みかけのグラスを置いたまま馬券を買いにウインズに向かう。店のひともちゃんと心得ていて、お客さんが帰ってくるまでグラスも皿もそのままにしておいてあげる。そうして夕方まで盛り上がったあと、競馬客を当て込んだ店は早々に店じまい。そのあと長い夜は、開けるのにとてつもなく勇気が要りそうな、妖しげな気配を漂わせるスナックの時間だ……。




たぶん、今回初めて活字になる、初音小路の誕生秘話。浅草に興味のある方は、ぜひご一読を!

http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/