都心のビジネス街を抜け、千駄木から日暮里あたりの下町エリアを抜けて、隅田川と荒川を越えて足立区に入ると、ランドスケープはとたんに表情を変える。というか表情を失う。
ここはいわゆる下町でも、本来は商業地区を指すダウンタウンでもない。メガシティ東京の周縁。千葉や埼玉にかけてだらだらと広がる郊外の入口なのだ。シティ・カルチャーとサバービア・カルチャーがぶつかりあう、潮の目なのだ。そして海の潮の目がかならず豊かな漁場になるように、ここには東京都心にもない、谷根千みたいな下町にもない、独特のなにかがある。
先週、この連載では竹ノ塚出身の女性ラッパーを紹介した。少し前に掲載した古き良きラジカセを甦らせるデザイン・アンダーグラウンドも、実は竹ノ塚をベースに活動してきた。東京23区の最北端に位置し、下層社会の縮図と言われて久しい足立区竹ノ塚とは、いったいどんな街なのだろう。いま、いったいなにが起こっているのだろう。
昼間、駅前に立って眺める竹ノ塚は、単なる地方都市の駅前風景となんら変わらない。バスとタクシーが溜まるロータリー。チェーン居酒屋と銀行の支店。高層マンション。それが夜になると、とりわけ西口の駅裏一角が、いきなり東京有数のディープな歓楽スポットに変身する。
今週・来週の2回にわたって、その隠された魅力のすべてを事情通のおふたりに語っていただく。出版社を経営する比嘉さん、編集プロダクションのオーナー赤木さん。どちらもこの近辺で育ち、いちどは町を離れたのが、最近になって遊びに戻ってきたツワモノ。知る人ぞ知る、夜の冒険家だ。
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