ジャズ・シンガーであり、レビュー・クイーンであり、イラストレーターであり、油彩画家でもある亜土ちゃんは、そのあまりにマルチな活動ぶりに、かえって過小評価されてきたきらいがある。
テレビでおなじみだった、あの歌いながら透明ボードに両手でササッとかわいい絵を描いていくパフォーマンスは、まるでマイケル・ジャクソンのムーンウォークのように、当時の日本中の子供たちをプチ亜土ちゃん化したものだった。いま考えると、あれが日本のグラフィティの、もっともパワフルなオールドスクールだったような気がする。そこらの商店街の壁とかに、アメリカの丸コピーのグラフィティをスプレーして得意になってる若者は、亜土ちゃんのオリジナリティを見習ったほうがいいかもしれない。
なぜか最近、亜土ちゃんは久しぶりのブームになっている。Tシャツからメモ帳、筆箱にいたる、おびただしい亜土ちゃんグッズを扱う店も各地に登場しているが、できたら亜土ちゃんが定期的に開いているレビュー・ショーや展覧会で、「アダルトな亜土ちゃん」を観賞してみてほしい。亜土ちゃんが妖艶なダンサーたちと歌って踊るステージや、意外に厚塗りの油絵のキャンバスには、一見かわいいだけのモチーフの奥に秘められた、そこはかとなくエロティックで、実はかなりオトナっぽいテイストが、グッズよりはるかに濃厚に漂っているのだ。
水森亜土は長いキャリアを持つイラストレーターですが、いつ見ても、その絵は古くささを感じさせません。私たちが人生の時々で出会うたび、亜土の絵はフレッシュで、チアフルで、ハッピーなものとして心に響きます。
なぜでしょう?それは絵を描く亜土自身が人生を楽しみ、常に前を向いて走り続けているからかもしれません。
水森亜土は多彩な顔を持ちます。絵描きとしてだけでなく、両手づかいのパフォーマー、歌手、アヴァンギャルドな舞台女優としても実績を誇ります。また華やかな活躍の一方で、四季折々の自然と動物と家族を愛し、ユニークな発想でハードな日々も軽やかに生きる賢い女性でもあります。
本展は水森亜土の全貌に迫る初の本格的展覧会です。亜土の元に秘蔵されていた初期の"お宝"グッズ、イラスト原画、油彩画、お気に入りの品々など、多数の作品・資料を一挙公開!またエッセイやインタビュー記事等も併せて紹介します。
私たちがなぜ"アドちゃん"に魅了されるのか、その答えがきっと見つかるでしょう。
(公式ウェブサイトより)
会期中にはトークショー(11月6日)やジャズライブ(12月5日)も開かれるそうなので、早めに予約して「ナマ亜土たん」のエネルギーに触れてくるべし! ちなみに「水森亜土展」ご来場のお客様限定!プレゼントとして、「キュートな亜土ちゃんイラストのケータイ待ちうけ画面が会場でもらえる」そうです。
会期:2010年10月1日(金)〜12月26日(日)
弥生美術館
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
● かつて『IDEA』誌に掲載された、水森亜土アトリエ訪問記と珍しいロング・インタビュー、それにアダルトなテイストの名作ペインティング・コレクションまで、こちらでたっぷり読めます! 展覧会前の予習にどうぞ。