2011年10月12日水曜日

おかんアートに首っ丈

メインストリームのファインアートから離れた「極北」で息づくのがアウトサイダー・アートであるとすれば、もうひとつ、もしかしたら正反対の「極南」で優しく育まれているのが「おかんアート」。その名のとおり、「おかあさんがつくるアート」のことです。なにそれ? と思うひともいるでしょうが、たとえば久しぶりに実家に帰ると、いつのまにか増えてる「軍手のうさぎ」とか、スナックのカウンターにある「タバコの空き箱でつくった傘」とか、ああいうやつです。

どこにでもあって、だれからもリスペクトされることなく、作者本人もアートとはまったく思わず、売ったり買ったりもできず、しかしもらえることはよくあり、しかももらってもあまりうれしくない——そういうのが「おかんアート」の真髄であります。

もともと「おかんアート」が世に出たのは、2003年に2チャンネルなにに立てられた「脱力のオカンアートの世界」と題されたスレッドだと思います。このスレッドへの投稿は、まだ過去ログがまとめて見られるようになっていて、実に珠玉としか言いようのない作品がたっぷりアップされているのです(http://www.geocities.jp/loveokan/okanart/)。

プロのアート作品にも、アウトサイダー・アートにすら存在しない、一種独特の破壊力については、来週アップするウェブ連載「Art It Web ニッポン国デザイン村」で詳しく論じる予定ですが、今回ご紹介したいのは神戸の下町である兵庫区、長田区の魅力を再発見しようというグループ「下町レトロに首っ丈の会」が去年発行した『おかんアート』なる作品集&ガイドブック。


神戸と言っても兵庫区、長田区のあたりは、いわゆるオシャレ・タウンとしての神戸イメージとはそうとう異なる、渋みたっぷりの街並みがいまだに色濃く残っていて、下町人情にあふれています。そういう場所でスクスクと育った「おかんアート」に魅せられた隊員たちが、作品を探し、その作者を捜し、作り方を教わり、見られる場所の地図を作り・・詳細なフィールドワークの末に完成させたのが、この一冊。「神戸おかんアート・ディクショナリー」と呼ぶべき労作です。

前述したように、詳しくは来週の連載ページでお話ししますが、作家紹介あり、作り方講座あり、ガイドページありと、これを持って神戸を歩くことを考えただけで、顔がほころんでくる一冊。アマゾンで入手できるわけではないので、ちょっと手がかかりますが、メールか電話一本ですむので、ぜひコンタクトしてみてください。





そして! 今週末の14日(金)から16日(日)までの3日間、神戸元町の海文堂書店にて、『神戸下町おかんアート展』が開催されます。首っ丈の会がセレクトした傑作おかんアートを展示するほか、重要作家たちによる「手作り教室」も各種開かれるようなので、週末関西にいるひとは、覗いてみるべし。だって「村井さん御夫婦による、牛乳パックと古切手を使った小箱教室」とか、「水上さんによる小さな折り紙の傘づくり教室」とか、「香坂さんによる、おしぼりタオルで犬を作っちゃおう教室」とか、書き写してるだけで微笑せざるを得ないラインナップ。みなさんも師匠に教えてもらった破壊力たっぷりの「おかんアート」を、いやがる友達に無理やりぷれぜんとしちゃいましょう!



『おかんアート』入手先:

【店舗販売】
海文堂書店(神戸元町商店街にある老舗書店)
〒650-0022
兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5番10号
電話:078-331-6501
FAX:078-331-1664
http://www.kaibundo.co.jp/index.html

クレープと駄菓子の店「淡路屋」(下町レトロに首っ丈の会総本部)
〒652-0864
兵庫県神戸市兵庫区笠松通7-3-6「淡路屋」
電話&FAX:(078)671−1939
http://awajiya.ko-co.jp/c6198.html

【通信販売】(メールかお電話でお申し込みください!郵送させていただきます)
下町レトロに首っ丈の会
citamatiretro@yahoo.co.jp
http://citamatiretro.com
電話&FAX:(078)671−1939