今週土曜日から宇都宮の栃木県立美術館で、アウトサイダー・アート好きには見逃せない展覧会が始まります。
『イノセンス いのちに向き合うアート』と名づけられた展覧会は、日本のアウトサイダー・アーティストを中心に据えながら、現代美術界を代表する作家たちをその中に含めるというか、滑り込ませてしまおうという、意欲的な展覧会です。
正規の美術教育を受けたわけでもないのに、ただ自分の内なる衝動に従って、まったく独創的な造形芸術を生み出す人たちがいます。かれらは、知的障がいや、心の病を患い、孤独な、社会不適応を抱えた人たちであったりしますが、その創り出す世界は独特の魅力を放ち、見る者に深い衝撃を与えます。こうしたハンディキャップを抱えた人たちや、独学で絵を描き始めた人のアートの中には、わたしたちの心をとらえて離さない純粋な魅力を湛えているものがあるのです。
本展では、障がいのある方や独学の画家の作品を紹介するとともに、障がいを抱える人のアートに興味を持って積極的に関わるアーティストや、いのちに向き合う表現を志向して制作する現代のアーティストたちの作品も区別することなくともに展示し、芸術の本質や役割を問い直してみる機会にしたいと思います。これらの作品を鑑賞するなかで、生きることの意味を再考するとともに、社会の中に根ざしたアートの役割を、いきいきと実感することができるでしょう。
38作家、約200点で展観いたします。
松本国三 《無題》 2002年 小出由紀子事務所蔵
各地の障害者施設で黙々と制作を続ける名もなき作家たちと、奈良美智や丸木スマ、田島征三といった有名作家がどう混じり合うのか、興味深いところです。
栃木には、宇都宮からはちょっと離れてますが、『もうひとつの美術館』という、小学校の廃校を利用した、障害者の芸術活動を専門にサポートする小さな美術館があります。
「もうひとつの美術館」は、栃木県那珂川町の里山に建つ明治大正の面影を残した旧小口小学校の校舎を再利用して2001年に開設された小さな美術館です。ハンディキャップを持つ人の芸術活動をサポートしていくことから、[みんながアーティスト、すべてはアート]をコンセプトに、年齢・国籍・障害の有無・専門家であるなしを超えて協働していくことで、まち・地域・場所や領域をつなぎつくっていく活動を行っています。
(公式サイトより http://www.mobmuseum.org/)
時間があれば、2ヶ所の展覧会をめぐる初夏のドライブもよろしいのでは。9月には美術館主催のバスツアーもあるようです。