2010年11月24日水曜日

長谷川きよし 静音ライブ

11月23日勤労感謝の日、日ごろの勤労のご褒美として、福島まで長谷川きよしのライブを観に行ってきました。なんだか最近、気になるライブは東京都心よりも地方のほうが多くなって、来年はもっとがんばっていろいろ回るつもり。「地方都市のライブハウスめぐり」なんて企画、どこかの雑誌でやらせてもらえないですかねえ。

会場となったのは福島市駅から歩いて5分足らず、陣場町と呼ばれる無数のスナックと、それをさらに上回る風俗店がひしめく夜の街。この4月には暴力団の抗争から発砲事件まで起きたワイルドなエリアの一角、ビルの地下にひっそりと店を開く「マジー・ノワール」というバー。これがフランスか南ドイツの田舎の居酒屋のような、素晴らしい雰囲気の店で、外との違和感にまずびっくり。



ふつうのライブハウスのような、薄くてまずい飲み物じゃなくて、ちゃんとしたバーテンダーが作る、ちゃんとした酒をもらって椅子に座る。照明は小さなスポットと、あとは卓上のロウソクだけ。そして時間どおりに手を引かれて登場した長谷川きよしは、店内中央の大きなテーブルに、ひとつだけ空けてあった椅子に腰をおろすと、ギターを抱えて静かに歌い出した。

「静音(しずおと)ライブ」と名づけられたこの宵のイベントは、声もギターもマイクを通さない、まったくの生音でひとり歌う、いわば究極のアンプラグド・コンサート。観客は限定40人(それでもう満員なのだ)。ステージもなく、マイクもアンプもなく、お客さんと同じ場所で、同じレベルでギターを弾いて、歌うだけ。それで1時間半。PAがないから、エコーとかのイフェクトも、もちろんなしで。演奏者にとってこれほど真剣勝負を強いられる、そして観客にとってこれほど贅沢なコンサートって、なかなかないだろう。

今年61歳という年齢が信じられない声の艶と張り。超絶のギター・テクニック。シャンソンやファドもあれば、『別れのサンバ』、『黒の舟唄』といったヒット曲も、もちろん歌ってくれる。ワインをグラスで2杯。陶然と聴き入っているうちに、あっというまの1時間半が終わってしまった。

歌い終わった長谷川さんは、持ってきたCDを買ってくれたひとに、ひとりずつていねいにお話ししながら、手さぐりでCDジャケットにサインを入れてくれる。そうしてギターケースにギターを収め、手を引かれて去っていく。

こんなに素晴らしいアーティストが、伝え聞くところによれば、いまは群馬県の小さな町に住み、日本中のどこへでも、どんな小さな会場にも出かけて歌っているのだという。歌い終わったら、みずからCDを売って。

レコード会社が作る宣伝臭いサイトとはぜんぜんちがう、いかにも手作りふうのオフィシャル・サイトにはコンサートのスケジュールが掲載されているが、その開催場所からも、フットワークの軽やかさが伝わってくる。


東京では来週11月29日に六本木スイート・ベイジルで、シャンソン歌手クミコとのジョイント・ライブがある。現在進行形の天才のエネルギーに、ぜひ間近で触れていただきたい。


サインしてもらったCDジャケット・・・感涙

すでに20枚以上のアルバムを発表していますが、デビュー40周年のおととし発表されたこのライブ・レコーディング・アルバムが、ライブの雰囲気をよく伝えてくれています。