2010年11月17日水曜日

東京右半分:シャッター通りと『王様の椅子』


JR上野御徒町駅から、にぎわう湯島方面とは反対側に春日通りを蔵前に向かって歩き出す。昭和通りを渡り、さらにまっすぐ行って清洲橋通りとの交差点にぶつかる手前が、佐竹商店街の入口だ。

明治31年に商店街が結成され、金沢の片町商店街に続く日本で2番目に古い商店街とされる、由緒ある佐竹商店街だが・・・現在の姿は都内でも有数のシャッター通り。すぐそばにある鳥越おかず横町などよりも、よほど古い歴史を持ち、商店街入口には地下鉄大江戸線新御徒町の出入り口もできて便利になったのに。

夏の終わりのある日、その佐竹商店街を歩いていたら、真新しい掲示板が立っているのに気がついた。『笑点街』と題されたステートメントに、「このたび、私たちは佐竹商店街を舞台に短編映画を撮らせていただくことになりました・・・」というお知らせが、吉岡篤史、オクケンユー、川口花乃子という3人の連名で記されている。その脇にはモノクロ写真で、いまも営業を続ける店の、たぶん店番をしているひとたちが座っている椅子が写真に撮られて並んでいる。思わず立ち止まって、じっくり眺めてみると、すごく味があっておもしろい。なんでこんなの、展示してあるんだろう。椅子を主人公にした映画ができるんだろうか? 写真に気を取られて最初は気がつかなかったが、写真の脇にはこんな説明文が貼ってあった――

『王様の椅子』

私たちは映画制作のために、週に一回、佐竹商店街にお邪魔しています。毎回、各店舗のご主人にいろいろな楽しいお話を伺いながら、商店街を歩いています。

そこで、私たちは、各店舗にはそれぞれご店主の座る『椅子』がある事に気付きました。その『椅子』たちは、「先代からずっと使っている椅子」「奥様お手製のクッション付き」「職人さんの手作り」など、各店の歴史と個性が刻まれた象徴的な存在ばかりでした。

「いつもは自分が座ってるけど、お客さんが来てくれた時はお客さんに掛けてもらうの。はじめは、みんな遠慮するんだけど、『これは王様の椅子だから』っていうと、みんな掛けて一休みしていってくれるのよ。」

そんなエピソードから今回の写真たちを「王様の椅子」というタイトルで展示します。




いったいどんな3人が、こんな風流なことやってるんだろうと気になって、会ってもらうことにした。東京右半分・・じゃなくて阿佐ヶ谷の駅で待っていてくれた彼ら3人は、吉岡さんと川口さんが俳優、オクさんはアーティストとしてそれぞれ活動しながら、『coy』というユニットを組んで、佐竹商店街の映画を撮ろうとしている若者たちだった。