去年で創刊から20周年を迎えた日本最強、いやもしかしたら世界最強にビザールなシロウト投稿露出マガジン『ニャン2倶楽部』と姉妹誌(兄弟誌か)『ニャン2Z倶楽部』。僕もつねづね愛読してはいましたが、なんとこのほどウェブマガジン・ヴァージョンが誕生。その名も『VOBO』、渋いネーミングですねー。
「ECSTACY WEB MAGAZINE」とサブタイトルにあるVOBOは、本誌と異なりそのスジの著名人(そしてもちろん愛読者のはず)であるひとたちのエッセイ中心で、じっくり熟読できる内容。みうらじゅん、ケロッピー前田、会田誠、根本敬、リリー・フランキー、丸尾末広、佐川一政などなど、創刊号からして豪華メンバーで、しかも毎週火曜日更新、しかもタダ! という信じがたい大盤振る舞いであります。
うれしいことにお声がかかって、僕がやらせてもらうのは『妄想芸術劇場』と題した連載コーナー。本誌のほとんどを占める過激な投稿写真の陰に、ひっそり隠れるように創刊時から続いている「投稿エロ・イラスト・コーナー」。そのハガキ職人たちの知られざる傑作群から、毎回ひとりずつをピックアップして紹介する、驚異のウェブ誌上個展です。
その記念すべき1回目を飾るのは、『ニャン2』投稿イラスト史の至宝とも言うべき「ぴんから体操」さん。もう、ペンネームからして最強ですが、過去20年間にわたって、時代によって作風を大きく変えながら、現在まで投稿が途切れない、そして編集担当者すら会えたことがないという、まことにミステリアスな存在です。
20年間の投稿作品を掘り起こし、時代別にご紹介するソロ・エクジビション。今週から4週間!にわたってお送りします。これこそが真のアウトサイダー・アート。正座してご覧ください!
第1回 ぴんから体操 1 初期の漫画ふう〜モノクロ作品
1990年の『ニャン2倶楽部』、そして93年の『ニャン2倶楽部Z』創刊当初から設けられた投稿イラスト・ページ。「イラストの森」「趣味のあぶな絵」「汗かきマスかきお絵描き教室」「現代の春画展」などと、そのときどきで適当なタイトルをつけられながら現在も継続中である。
20年間の歴史が生み出した多数の常連、名物投稿者を取り上げ、いわばウェブ誌上個展として紹介していく『妄想芸術劇場』。そのトップバッターとしてご紹介するのが「ぴんから体操」氏である。すでにご存じの方も多かろう、ニャン2史上に輝く伝説の投稿アーティストだ。
ぴんから体操氏がニャン2に初登場するのは1992年1月。色鉛筆の繊細な筆づかいを特徴とする現在の画風とはずいぶん異なり、猫耳に大きな瞳の少女たちを主人公にした漫画ふうの作品だった。
94、95年と投稿が一時途絶えるが、96年になって復活。しかしその作風は一変していた。90年代初期の漫画タッチは影をひそめ、黒ペンによる点と線だけで画面が構成された、それはダークなグロテスク・リアリズムであった。
異端の漫画家・東陽片岡を想起させる背景の緻密な描線と、点描による人物表現から生まれる異常な緊張感。突然の作風転換の裏に、いったいなにがあったのだろうか・・・。
(ぴんから体操氏の作品には、しばしばその裏面に、これもアウトサイダー現代詩としか言いようのないフレーズが、肉筆で記されている。今回はその文章も余さず採録した)
穴の肉星6
野外訓練
おまんこにミツをぬられてこのかっこうのままアリにたかられても
気味悪い虫がきてもグラスを落してはならぬ
もし落したらもっとひどいおしおきがまっているからじゃ
病院で言われた。ちんぼうが骨折しています、ぬははと。
つったったままの看護婦はだらだらして思いつめたよう。いたいよう。
ぬははと三年前につぶれた、病院のべっとで、血ぬれて待つだろうか。
もう一度ゆきたい 弟が待っている消えた病院へ。