2011年1月13日木曜日

東京右半分:冬風よ塔まで運べ一揆の声

去年1年間で右半分はもちろん、日本でいちばん話題になった場所はといえば、これはもう東京スカイツリーに間違いない。まだ完成まで1年以上あるってのに、お膝元の押上近辺は毎日、記念撮影に熱中する観光客で大混雑。いざ完成したあかつきには、いったいどうなっちゃうんでしょう・・。

しかし隅田川を挟んだ向かいの台東区には浅草も、上野もあるのに、歴史はあれどイマイチ地味だった墨田区にとって、スカイツリー建設は千載一遇のチャンスである。すでに下町らしからぬ高層マンションや、おしゃれなカフェなんかがツリー完成後のイメージアップを見越して続々出現中。区の役人さんもディベロッパーも、日ごとにちょっとずつ高くなっていくスカイツリーが、ひと束ずつ積み上がっていく札束に見えているにちがいない。



ニューヨークのソーホーやロンドンのイーストエンドに象徴されるように、貧困地域からもともとの居住者を追い出して、高級住宅地や商業地域へと再開発する「ジェントリフィケーション」と呼ばれる現象が、1980年代あたりから世界中の大都市で起きているのはご存じのとおり。ここ墨田区でも官民一体となった「ジェントリフィケーション友の会」が、今年はさらに活動を活発化させんと虎視眈々なわけだが、そういうアッパー志向の方々にとって、なにより目障りなのが隅田川流域にブルーテント村を形成している(いた)野宿者=ホームレスたちであることは想像に難くない。

そこで墨田区はアルミ缶や古紙などを、集積所から持ち去ることを禁止し、違反者には20万円以下の罰金を課す条例を制定し去年10月から施行。ホームレスの資金源を絶って追い出し(絶滅?)を計ろうという、大胆なアクションに出たのであった。

ホームレスにとって最大の生活手段を奪うことになる同様の条例に対しては、全国で反対運動が盛り上がりつつあるが、ここ隅田川沿いの墨田・台東区では、浅草に隣りあう全国最大規模のドヤ街・山谷に生きる底辺労働者、ホームレスへの支援のために結成された山谷労働者福祉会館が中心になって、去年から墨田区の条例への反対運動が続けられてきた。そのファースト・ステージをまとめるかたちで企画されたのが、去る12月12日に浅草・山谷堀公演で開催された『渋さ知らズ大オーケストラ山谷堀広場コンサート』。なんでも「渋さ」のメンバーに山谷とかかわりのあるひとがいるそうで、今回の出演が実現したとか。しかも入場料は「カンパ&投げ銭で」という、浅草らしいスタイルだ。




12月の寒空の下、公園には昼前から豚汁やカレーを売るコーナーが出て、三々五々観客が集まってくる。1時からのミニ・シンポジウムに続いて、2時から「渋さ」の演奏がスタート。日本が世界に誇る彼らのパフォーマンスを知らない方はいらっしゃらないと思うが、舞踏チームを入れて20数名のフル・メンバー、それも大ホールや大規模野外コンサートではなく、小さな公園で、こんな至近距離で満喫できる機会はなかなかない。



http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/