2011年1月26日水曜日

『俺節』復刻版・完結!

ここ数年、演歌、それも売れないながらがんばりつづける歌手たちの人生がすごく気になって、追いかけつづけています。去年は平凡社のウェブ・マガジンで、インディーズ演歌歌手をインタビューした『演歌よ今夜も有難う』という連載もやらせてもらいましたが(まだ読めます! http://blog.heibonsha.co.jp/enka/)、そういう演歌好きの編集者である僕のツボにもっともハマる漫画家といえば、土田世紀さんかもしれません。なんたって代表作が『編集王』ですから。

その土田さんが1990年代初頭にビッグコミック・スピリッツに連載していた『俺節』が、上中下の分厚い3巻セットとして復刻され、このほど下巻が発売、完結しました。世の中がバブル絶頂だった時代に、青森から演歌歌手を目指して上京したアガリ症の青年を主人公に据え、あくまでも場末の人生にこだわるという、トレンドに完全に背を向けた内容が熱い支持を得つつ、ながらく入手困難だった幻の名作です。ちなみに題字は北島三郎! しかもサブちゃんは題字だけでなく、主人公のデビュー曲である『俺節』が実際にCD化された際のプロデュースまで手がけているそう。残念ながらCDは中古屋でもぜんぜん見つからないのですが。

演歌好きはもちろんですが、業界の底辺でもがき苦しみながら、自分の歌にかける主人公の生きざまは、かぎりなくロックでもあり、ヒップホップでもあります。もやもやした日常、ぬるま湯のような人生に回し蹴りを喰らわせたい、すべてのひとびとにとって必読書でありましょう。みっちり描きこまれて、全面黒々とした画面。ド演歌のコブシがそのまま顔になったような、脇役たちの表情。とにかく最高なので、3巻まとめて即ポチしてください! 上、中巻の巻末に添えられた長文メール・インタビューも、かなり興味深いです。

『編集王』のほうは古本で安く買えますから、『俺節』に酔った勢いで、両方読み返すべし。