山内栄衛門(やまうち・えいえもん)さんは「ながれのかばんや」である。特製の自転車に自分で作ったカバンや袋をたっぷり積んで、谷中・根津・千駄木の、いわゆる「谷根千」かいわいを流しては、道端や家の軒先に自転車を停め、店を開いて客を待つ。人通りがなくなったら、場所を移動して、また店を開く。夕方まで、そうやってお客さんの相手をして、それから商品を自転車にくっつけた箱にしまって、三河島の自宅兼工房まで漕いで帰る。週末ごとにそんなふうに移動販売、平日は家にこもってカバンづくり。そんな生活が、今年で3年目になった。そして究極にオッサンくさい名前の栄衛門さんは、実はうら若き女性なのだ。