2004年にスイスで第1回が開催された、ブレイクダンスの世界最強バトル『レッドブルBC ONE』。毎年ベルリン、サンパウロ、ヨハネスブルク、パリ、ニューヨークと場所を変えて決勝大会が催されてきましたが、今年はついに東京で開催決定! 11月27日に代々木第二体育館で行われます・・・が、先週売り出されたチケットは、全席あっというまにソールドアウト! 僕はかろうじて2階のスタンド席を買えましたが、買い逃したみなさん、当日ダフ屋のおやじと交渉するとか、ヤフオクで探すとか、なんでもいいから万難を排して、観に行ってください!
16人のファイナリストが、1対1でダンスのワザを争うというスタイルからして、ニューヨークの若いギャングたちがバトルの一環として生み出したという、ブレイクダンスの起源そのもののスタイルで、観る者すべてをヒートアップさせます。そして世界各国からのファイナリストたちが見せる、ワザのすばらしさ! とりあえず公式サイト内のヒストリー・ページでその片鱗を味わっていただきたいですが、
こういうのを見てしまうと、いま身体表現の最前線はどっかのビエンナーレでも、美術館でもバレエ劇場でもなく、ましてやオリンピックの体育館やスケートリンクでもなく、世界中のストリートに、コンクリートの上にあるんだと深く納得せざるを得ません。
出張で地方にでかけ、夜のシャッター通りを歩いていると、ビルのガラス面を使ってダンスの練習に熱中しているキッズを、どこの町でも見かけます。ほんとに、すごく小さな町でも。酔っぱらいオヤジたちの冷たい視線を完璧に無視しながら。
学校の体育や音楽の授業なんてぜったいさぼってる感じの、ワルっぽい男の子や女の子たちが、真剣に振り付けを話し合ったり、ガラスを前にひとり黙々とターンを繰りかえしたりしているのを見ると、なんだかうれしくなるし、学校が教えてくれないことを、みんなちゃんとわかってるんだなと勇気づけられます。ヤンキーって、ようするに日本のヒップホップだったのかもしれないなと思わされるのも、こんなときです。
ファインアートとしての現代美術のように、ニューヨークとかロンドンとか、しょせんは世界的な大都市のエリート層が業界を作り、マーケットを作るのではなく、2メートル角ほどの地面と、CDラジカセが1台あれば、世界中のどんなど田舎からでも、世界でいちばんリスペクトされるダンサーになることができる——これがブレイクダンスの、ヒップホップ・カルチャーの偉大な特長でしょう。
動画を見てもらえばわかりますが、BC ONEのファイナリストたちはだれも、バレエ・ダンサーや体操選手のようにすばらしい体格を持っているわけでもないし、服装だってけっしてかっこよくないし、ルックスもむしろ地味な、育ちも良さそうに見えない、ようするにぱっとしない感じの子ばっかりです。そういう子供たちが、音楽とともに軽くステップを踏んでいたかと思うと、いきなり息を呑むような大技を決めてしまったりする、そういう瞬間を目撃してしまうと、美術館で難解なコンテンポラリー・ダンスとかを我慢しながら見ているのが、なんだか耐えられなくなってきます。