2010年9月22日水曜日

今夜も来夢来人で:最終回! 北海道厚賀

いままで2年半、全31回続いたアサヒカメラの異色連載「今夜も来夢来人で」、ついに最終回です。で、選んだ場所が北海道日高の厚賀という町。最終回を飾るにふさわしい、まっすぐ正統派のカラオケスナックでした。


新千歳空港から南下、苫小牧を経て海辺の国道を走ること約1時間半、厚賀という小さな町に着く。宿泊施設は駅前に商人宿のような旅館が1軒あるだけ。人口わずか1400人足らず、町なかにはコンビニもないこの町に、スナックは5軒もある。コンビニのない町はあっても、スナックのない町は日本にないのかもしれない・・などと感傷に浸りつつ町をクルマで流してみると、真っ青な外観がすぐ目につくのが<スナック来夢来人>だった。


生まれも育ちも厚賀という新田徑子(みちこ)ママの来夢来人は、今年で31年目の老舗。昔は牧場で働くひとや漁師さんが多かったそうだが、いまはお客さんのほとんどが「カラオケ仲間」。順番にマイクを回しながら、いずれ劣らぬ歌自慢たちが夜ごとにノドを競っている。

「こんな田舎だけど、みんな親切だしねえ」と言う徑子ママ。それに、目の前の海で獲れる海産物のおいしさだって、どこにも負けない。「うちはお通し、ちゃんと作るんです。お年寄りには噛みやすいように柔らかいもの、とか考えてね」と言いながら、出してくれたひと皿は「今朝あがったばかり」というカレイのお刺身。もう少し涼しくなったら、今度はシシャモがおいしいそうだ。

コンビニなんかなくたって、商店街がシャッター通りだって、おいしい魚と酒とカラオケがあったら、ほかに人生に必要なものってあるんでしょうか。